源氏物語のゆかりを尋ねて

京都よ、胡坐を掻かず、元気を出せ

源氏物語千年紀を迎えた11月1日に、小生は越前市武生のたけふ菊人形を訪れた。
千年紀の折から、その菊人形展では源氏物語の八景を仕立て上げているとのことであったからである。

幼し頃、菊人形といえば、枚方パークでの時代絵巻を菊作りした、「ひらかた大菊人形展」に連れて行かれたものだった。その時代絵巻は、「風林火山」「義経」などと銘打ち、その年のNHK大河ドラマの名場面をテーマにしたものだったように記憶している。残念なことに、ひらかた大菊人形展は平成17年に96年間の歴史に幕を閉じている。
二条城で菊花展が復活すると聞いた昨年には、「二条城大菊人形展」を頭に浮かべたが、思い通りにはいかないものである。
実現して貰えると嬉しいのだが。

越前武生を訪れたのは、菊人形見たさだけではない。長徳二年(996年)、父・藤原為時の越前守への国司下向に伴い、紫式部は武生に一年余り滞在している。
式部が唯一、京を離れたその縁の地を旅してみたかった。
その後、京に戻り源氏物語を書いているわけだか、武生では式部がどのように評価され、源氏物語を地元の菊師がどのように表現しているか、好奇心がかきたてられたのだ。

武生の町に入るや、式部を偲んで造られた寝殿造り庭園の公園があった。雅やかな雰囲気を持つ公園は、その名も「紫式部公園」と名づけられている。園内には、金箔で仕上げられた紫式部像が建立されていた。立像の背に控える木々の緑に金色の式部が映え、誇らしげに見える。冬が訪れたら、その雪の白さに更に映えることが容易に想像きる。

紫式部公園から続く松並木の遊歩道の先が、菊人形展の催されている中央公園である。
遠目に法輪の先が伺える。近づいてゆくと、朱の枠組みの上に五重の屋根が見え、屋根の部分が黄と緑である。その菊花五重塔は、屋根に懸崖菊が敷き詰められていたのである。

「源氏物語 〜紫式部を育んだ越前・たけふ〜 2008たけふ菊人形」では、京都の菊花展や献菊展の比ではない数々の菊を見せてもらい、「紫式部越前へ」「紫式部と武生」「第五帖若紫 紫上との出会い」「第七帖紅葉賀 青海波」「紫式部と源氏物語」「第九帖葵 牛車の争い」「第十七帖 絵合 絵合の会」「第二十四帖胡蝶 春の宴」といった、菊装束の人形と名場面を拝見させてもらった。
おまけに、源氏物語に登場する草木50種のうち、21種でこさえた庭園も拝見した。そこには、限りある観光資源を掘り起こし、地方都市の活性化させようというエネルギーがあった。

裏返しは、「作り物ではない本物を持つ京都よ、胡坐を掻かず、元気を出せ」である。そう考えさせられるのである。

京都での千年紀記念式典では、天皇皇后両陛下をお迎えして、「古典の日」の宣言が行われ、国民の休日にするや否やの提言もされたようである。
誠に結構なことではあるが、紫式部の墓碑を訪れれば、この地から為すことが先にあるのではと思ってしまう。今夏島津製作所の塀が綺麗に改修されたが、両陛下を紫式部の墓碑にご案内されたのであろうか。

京都に戻り、今週は洛中にある紫式部や源氏物語に縁の町歩きをしてみたい。
丁度、京都非公開文化特別拝観(11/9)も行われているので、源氏物語ゆかりの寺宝をメニューに織り混ぜることにしている。

まずは源氏物語ゆかりの寺宝「明石・須磨図屏風」を、上京区堀川寺之内の薄雲御所慈受院(じじゅいん)門跡の特別拝観からスタートの予定である。同時に公開される大織冠(藤原鎌足)絵巻は大英博物館所蔵のものを凌ぐとの鳴り物入りである。

そのまま堀川通を北上すると、北大路の手前西側に前出の紫式部墓所がある。
島津製作所の隣の小道を奥に進むと盛り土がされ、「紫式部墓」と刻まれた墓石が立つ。ムラサキシキブの花がいい色づきをしている頃だろう。

式部ゆかりが点在する散策路といえば西陣から紫野周辺である。建勲北通を紫式部通と呼び習わしていることをご存知の方も多いだろう。

墓碑に手を合わせた後向かう先は、堀川を南へすぐの所を西に玄武神社の方へ進み、その前を通り過ぎ、右に折れすぐ左へ入ると紫式部通である。道なりに雲林院がある。
ここで紫式部は晩年を過ごしたと謂れ、源氏物語の「第十帖賢木(かしわぎ)」では、藤壺につれなくされた光源氏が出家を考え、篭った寺院である。

ここから北大路へ出て、大徳寺南門から境内へ、北端に向かい進み本坊を越すと右手に塔頭真珠庵がある。四方を石で囲まれた古井戸が、紫式部産湯の井とされている。
真珠庵は、長谷川等伯の屏風絵、村田珠光の枯山水など富に有名で、現存最古の百鬼夜行図も所蔵している。京都非公開文化特別拝観(11/9)の時期しか、拝観は許されていない寺院である。

時間が許せば、大徳寺から千本閻魔堂へ立ち寄り、十重の紫式部供養塔にもお参りし、閻魔大王と小野篁に、紫式部を地獄から救ってくれたお礼も言いたいところである。

そして、車移動で寺町広小路に向かう。最後は誰もが知る紫式部生誕の地、邸宅の地である現廬山寺である。
源氏の庭に邸宅跡の碑を眺め、この土、その風を感じ、執筆中の胸中に同化してみる。トリは、源氏物語ゆかりの寺宝として特別公開されている「若紫(住吉廣尚画)」を拝見して帰宅する。

京都市は、源氏物語ゆかりの地の四十ヶ所に説明版を出してくれている。
跡地の説明版だけでは物足りないが、もみじを狩りながら、ロマンを求めて見慣れた通りを歩いてみてはどうか。源氏物語千年紀の今年だからこそ。

出不精の諸兄であれ、きっと歴史の中に時間旅行した気分になってくる。

ひらかた台菊人形展閉幕 (京阪電気鉄道)
http://www.keihan.co.jp/news/data_h17/2005-05-31kiku_doll.pdf

たけふ菊人形 源氏物語 (越前市)
http://www.city.echizen.lg.jp/office/060/050/kikunin/kiku.jsp

第44回 秋季京都非公開文化特別拝観
http://www.kobunka.com/hikoukai2008aki.html

慈受院
http://www.jijuin.com/

雲林院
http://evagenji.hp.infoseek.co.jp/co200402news13-1.htm

千本ゑんま堂
http://yenmado.jp/

廬山寺
http://www7a.biglobe.ne.jp/~rozanji/