傍目八目:世の中、見方違えばこう変わる。

一億総デザイナー時代到来!?

私は約30年間、海外(主にヨーロッパ)から服飾雑貨、美術工芸品、絨毯などを日本に紹介、輸入・販売することを生業としてきました。
私が40歳の頃であったと思いますが、業界の先輩であるIさんから「君は右脳派やな。」と言う言葉を耳にしました。私が知らなかっただけかもしれませんが、右脳・左脳派という言葉を耳にしたのはそれが初めてのことでした。怪訝な顔をしていたのだと思います。

「いや、悪いこと言うてんのと違うで、ワシも右脳派やねん。最近知ったんやけど、右脳派の人間にはこの仕事は合うてるらしいで。」
「???」
「今度、大阪で詳しい男を紹介したるさかいウチの会社においで。ワシの友人で医者なんやけど、そんなことばっかりやっとる奴や。」

そんな経緯があって興味半分、1ヶ月後に、Iさんのお世話でそのお医者さんに会ってみることになりました。会うなり何枚かの絵を見せられ「この絵、何に見える?」、「ちょっと腕組みしてくれる?」、「手を組んでみて。」など、よく覚えていませんが、その他にもいくつかやらされました。

そして、「あのな、アンタは物事を論理的に把握することはできるやけど、それに対して感覚的にしか対応でけへん人や、左脳派的に把握して右脳派的に処理するいうタイプや。」、「???」、「要は、夢とか理想をもっても現実とのギャップが大きすぎて、大げさに言うと自己矛盾やな、それに苦しむタイプなんや。」、「この間、Iさんは、今の仕事は私に合うてると言うたはったんですけど・・・」、「間違いない、合うてる!そやけど自分で何かを創ろうと思うたらアカン、それは無理や。他人さんの創らはったものをしっかりアンタの眼で見極めるほうなら大丈夫やけどな。」、「つまり、先生、クリエイターにはなれへんから、持ってる眼を生かして目利き商人になれということなんですね。」

日本国内では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの剽窃疑惑でなにかと騒々しくなってきています。多くの人が限りなくクロに近いと思っているせいかデザイナーS氏の過去の作品(?)が片っ端に次から次へと引っ張り出され、これも怪しい、あれも怪しいと姦しいことこの上ありません。この現象をつぶさに見ていて、「この疑惑はPC, アプリの開発がもたらした産物や。昔は無理やったけど今ならオレでも、というよりアプリのおかげで誰でもデザイナーを気取れる時代になったんや。」と感じるに至りました。みんなが日常当たり前にやっているコピー&ペーストはもとより、星の数ほど出回っているアプリの中から、また自分がやろうと思っている仕事に相応しいアプリを選び、使いこなす技術さえあれば「デザイン・センスやクリエイティブな能力」がなくてもいいわけです。

もちろん、デザインは色や形のみならず視野にいれておかなければならない要素は他にもあります。しかしやろうと思えば、いいデザインをベースにそのアプリを使って手を加えるだけで、また組み合わせるだけで似たものはもちろん全く別物を生み出すこともできてしまいます。

グラフィックデザインに関して言えば、オリジナルかパクリかという問題は、工業製品の特許などとは異なり極めて曖昧なモノです。同じクリエイティブ分野と言えど、美術・芸術とは明らかに異なるデザイン分野、ましてPCを扱う技量さえ持てば、誰でもとはいわずとも簡単にできてしまうデザイン、今回の剽窃疑惑に接し、こういうことが続くと将来、デザイナーという職種は生き残るのか、 そんな性格のモノに高い対価を支払う時代がいつまで続くのか首を傾げる今日この頃です。それだけにこの業界でメシを食っている人たちは業界のあり方を見直し、個々のクリエイティブ能力の開発に努力されたいと期待してやみません。

2015年8月12日 – 11:06 PM