竹の如く、しなやかに強く

ニュースを観ていると、そろそろ京都の南の方では特産品の筍が市場にも出回りはじめているみたいどすけど、竹は春の食卓を彩るだけやのうて、真っ直ぐに育って工芸品として生活の中にも溶け込んでいます。

竹工芸は、京都では既に平安時代からあったそうで、以降も京扇子や京団扇の骨材として用いられるのをはじめ、お茶にまつわる道具としても重宝されるなど身近な生活用品だけでなく、生垣や獅子脅しのような家の外溝にも使われてきました。
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ちょっと話は横道に逸れるんですけど、世界的な発明家として知られる彼のトーマス・エジソンが発明した電球も、京都・八幡の竹が一役、いや重要な役割を果たしたんやとか。そのいきさつは石清水八幡宮の公式Webサイトにも詳しい書いたありますけど、境内には記念碑まで建てられていて、式典の折にはエジソン夫人もいらっしゃってとても感激したはったそうな。

ただそんな竹の工芸品も、家庭に電気製品が溢れ、住宅そのものもマンションの割合が多くなり、前回も書いたようにお茶をペットボトルで飲む人が増えてくると、茶杓や茶筅などの竹工芸品が活躍する場もどんどん狭もうなってきます。

kitchintool そんな竹の工芸品をモダンな暮らしに溶け込ませようとしたはるのが、河原町通三条東入ルにある「ロイヤルパークホテル ザ 京都」にお店を構える「公長齋 小菅」さん。都会的なホテルの雰囲気に溶け込むお店は、家具デザイナーの小泉 誠氏の手によるもの。白い壁とフローリングという一見飾り気のないシンプルで落ち着いた設えが、むしろ繊細で微妙な表情の竹工芸品を映えさせてます。

「公長齋 小菅」さんは、1898年に東京の日本橋にあった「小菅商店」の一角で、今の社長さんの祖母に当たる方が創業。お茶席などで使いはる道具などを、各宮家に納めていらっしゃったそう。また戦前には、中国原産の“トンキン竹”を使ってスキーのストックを拵えて、陸軍に供給したはったと言います。

その後も一般的な商品をつくり出すだけでなく、オリジナルなデザインにこだわった工芸品を開発。1904年には「北米セントルイス万国博覧会」、1910年には「ロンドン日英博覧会」など、国内外の博覧会で数々の賞を受けていらっしゃいます。

第二次世界大戦をきっかけに疎開して京都へ転じ、ついには自社工房も開設。そんな自社工房だけやなく、全国各地にいたはる腕の良い職人さんたちに、「茶道」「華道」「香道」の三道芸が発達した京都ならではの感性と文化を伝え、様々な工芸品を生み出して来たはります。

大雑把に言うと、竹は春になり、雨が降ると一日でグンッと延びる性質をしています。蛇足ですが“雨後のタケノコ”の諺は、こんな性質から来てます。
切り出しは比較的空気が乾燥する秋から冬に掛けてに行われ、3月から4月に掛けては湯せん、脂抜きが施されます。竹は、多い部分やとその60%程度が水分ですよってに、乾燥にも随分時間が掛るんやそう。脂抜きは、カビの予防のために必要やと訊きました。

真竹(まだけ)は繊維の密度も程よくて柔軟性があり、色や艶も優れているために一番利用される機会が多いそう。最近ではあまり見掛けなくなりましたけど、皮も食品の包装に使われるほどです。これは竹の成分に抗ウイルスの機能があるからやそうで、おむすびやお肉を包んでもらった経験がおありの方もいらっしゃるかも知れませんね。

京都をはじめ全国的に見られる孟宗竹(もうそうちく)は繊維が荒くて固いため籠などを編むには不向きで、主に食用のほか、工芸品としては箸や箆(ヘラ)などに用いられています。ボクは筍の名産地の一つでもある乙訓で育ったんですけど、木の板で囲って四角い竹を拵えたりと、細かな加工は施さず、そのまま工芸品として使われることが多い印象がおます。

そんな風に竹は種類によって使い道も様々なんですけど、それぞれの性質を見極めた上で製品を生み出すのが、プロデューサーでもある常務取締役、小菅達之さんの役割。
他の業界で働いた経験や、ファッション、インテリアなどに対する造詣が、今の仕事にも活かされていると仰います。
そんなご自身の嗜好から生まれたのが『minotake』。先に書いた小泉 誠氏といろいろな偶然にも恵まれて2008年にめぐり会い、意気投合して翌年に誕生したこのシリーズは、竹の滑らかなカーヴや繊維の模様をそのまま活かしたヘラやしゃもじといったカトラリーなど、何れも美しくてモダン。有りそうで、実はこれまでにはなかった品々が揃っています。この中からお気に入りを一つ、ジャム用のヘラを最初に買ってみたんですけど、瓶に沿って掬いやすく、またカチカチとした嫌な音も出ません。見た目も含めて、何だか自分が上質な暮らしをしているかのように感じてしまうのです。

達之さんがご自身の意見を通し、従来からある商品群に加えてモダナイズされた商品開発に携わり、今のようなラインアップにするまでには幾つもの努力を重ねられたのだとか。

小菅達之さん

従来の竹工芸品にはない、
新しいものをつくりたい。
「公長齋 小菅」常務取締役・小菅達之さん


百貨店の物産展などで全国を駆け回り、合間を見つけては家具や雑貨、ファッションなどを観てアイデアを蓄積し、それを自社の製品へとフィードバック。他人よりも多くのことをを学んだという自負、そして良いものを世に出したいという真摯な気持ちで、周りの人たちから共感を得られたのでしょう。
東京・銀座にある取引先の方が引き合わせてくださった縁でイタリアの皮革工房とのコラボレーションによって生まれた籠バッグや財布は、イタリアンレザーと編み込んだ竹の組み合わせが、これまた独特の風合い。次に買い替える時には、きっとこちらを選ぶことになりそうです。

これから目指していらっしゃることを訊ねたら、『年に100種類くらいは魅力のある新製品を開発し、お買い上げいただく方はもちろんのこと、作り手の暮らしも豊かにし、文化を守っていきたい』とも。
伝統工芸の世界で明るい話題を耳にすることは多くありませんが、職人をキチンと育て、その能力を発揮する場を用意するスタンスは、他の業界の方にも参考になるかもしれませんね。

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公長齋 小菅 京都本店

京都市中京区三条通河原町東入ル中島町74
ロイヤルパークホテル ザ 京都1F
Tel.075-221-8687