古代と現代、美しさの共演
ROSSO×ROSSO KYOTO へ
12月に入ったある日、いつものようにFacebookでいろんな書き込みを観ていたところ、ボクも参加しているクローズドのフォーラムへの投稿で、フェラーリF1が京都国立博物館内に展示されることを知った。
歴史好き、芸術好きの元自動車雑誌編集部員としては、これは見逃す手はないと駆け付けた初日の金曜日。会場へと足を運ぶと、明治28年10月竣工という旧帝国京都博物館の本館だった特別展示館の前にはまだ作り手の温もりが感じられる、主に1970年代までに生産されたヒストリックカーたちが出迎えてくれた。
そのクルマたちは、その日の朝に高台寺から博物館までをパレードランしたフィアットやマゼラティで、美しい佇まいから、それぞれのオーナーが愛情を籠めて接していらっしゃることがよく解った。
この「ROSSO×ROSSO」というのは、一昨年に起こった未曾有の災害「東日本大震災」の被災地の人たちのために行動をと結成された実行委員会が運営するもので、主にWebサイトでチャリティオークションを開催するなど、チャリティイベントを企画している組織。
今回は、京都国立博物館の常設展示館などが立て替えを進めていることもあり、所蔵する文化財の保護を目的に京都で開催されることになった。
会場となる特別展示館に入ると、まさしく“ロッソ(赤)”を身にまとったF1マシン、「フェラーリF2003-GA」がお出迎え。そしてその鼻先では、彼の卑弥呼も眺めたとされている古代日本の青銅鏡が現代のハイテク技術を用いて、作られたであろうその当時の美しい姿に再現されていた。
数ある古代青銅鏡の中でも、「三角縁神獣鏡」は多くの謎に包まれた存在で、いつ、何処の、誰のために作られたものかさえ、未だに論争が絶えないくらい。国指定の重要文化財でもある青銅鏡とフェラーリのF1マシン。一見何の繋がりもなさそうに思えるけれど、“その時代のテクノロジーの粋を集めた”ことと美しさという面で両者は符合する。
青銅鏡は古代の高貴な女性の心を揺さぶっただろうし、「フェラーリ」という名前はクルマ好きな永遠の少年の心をとらえて離さない。この二社が、京都という歴史と伝統、文化に彩られた街で出逢うというのも、なかなか素敵なことではないだろうか?
フェラーリに関する展示では、他にも世界的なフォトグラファーが撮影したレース写真や、実際に使われたエンジンなどがあった。本来はヘッドカバーの上にカウルが被せられるのでほとんど目にすることがないエンジンにも、イタリア人らしい美しさへのこだわりが感じられた。また、幅が市販車の倍ほどもあるBBS社のホイールはマグネシウム鍛造のため、来場者の多くが実際に持ち上げると、見た目からイメージするよりも遥かに軽いことに対して一様に驚いていた。
今回の「ROSSOROSS×O KYOTO」では、最終日にチャリティー・オークションが開かれたのだが、なんとスクーデリア・フェラーリF1チームに帯同するシェフ、Sntangelo Vincenzo(サンタンジェロ・ヴィンツェンツォ)氏がボランタリーに来日し、会場となった「ハイアット・リージェンシー京都」のショーン・キーナン総料理長とのコラボレーションで、来場者へ提供する料理をプロデュースするというサプライズ!
その詳細については、次回に…。
本記事の写真撮影は末次正芳及びROSSO ROSSO 2012 KYOTO PHOTO STAFF。