【言っておきたい古都がある】

悪霊だらけ(その2)

~「悪」を抱合するもの、しないもの~

 さて、怨霊と悪霊はどう違うのか、という話。
 「悪霊」というのはあるけれど、それに対する「善霊」というのは無いようである。
 だいたい、普通の言葉でも「善悪」がペアになっているものが多い。

善玉⇔悪玉  善意⇔悪意  善用⇔悪用
善人⇔悪人  善政⇔悪政  善行⇔悪行

 もちろん、例外もたくさんあって、「善戦」の反対は「悪戦」よりも「苦戦」だし(「悪戦」というのは「悪戦苦闘」というフレーズでしか使わないかもしれない)また「悪筆」の反対は「善筆」ではなく「達筆」である。「善良」には「不良」が対応する。

 それでは「悪霊」ではない、良い霊は何というのだろうか?

 これは簡単で、単に「霊」でよいのである。

 つまり、「霊」というのは本来は悪いものではないということ。
 本当は悪くないけれど、たまたま良くない奴が現れると前に「悪」を付けて表すと。
 これと同じ性質を持った言葉に「悪女」がある。「悪女」に対する「善女」というのは「善男善女」という慣用句にしか使われないのではないか。
 だから「女」は本来は「善い」という性質を持つから、善くない女は特に「悪女」と言われるようになった。

 これが男になると「悪男」とは絶対に言わない。男というのは必ずしも善い奴ばかりではないからか、「男」という言葉の中に善も悪も含まれているのである。
 あえて言うなら、善くない男は「悪人」と言われる。
 ん? 「悪い人」は全部男か?

 このように、「女は悪くない」というのが基本認識なのだろう。
 これと同じで「霊」というのも基本的には悪くない。
 悪さをする霊は霊外。。。ではなく、例外ということ。
 
img_0 同じ感覚の単語は他にもあって、警官や弁護士は本来善い人であるから、悪いことをする奴は「悪徳警官」とか「悪徳弁護士」とか、前に「悪」を表す言葉を付けて表現する。
 昔は「悪徳政治家」というのもあったが、今では使わなくなったようだ。
 これは悪い政治家がいなくなったのではなく、「政治家」という言葉の中に「悪」が吸収されてしまったのである。つまり「政治家というのは悪いこともする」というのが共通認識になったということ。センセイ方、喜んではいられませんね。

 そこで悪霊の話に戻るが、菅原道真や平将門のように正体が分かっているのが怨霊でどこの誰だか分からないのが悪霊だと前回で記した。
 ここが厄介なのである。
 誰だかわかっていれば、その人が何に対して不満を持っているのかが分かるので対処の仕様もある。
 しかし誰だか分からなければ何が不満か分からないので処置なしである。だいたい悪霊というのは意地が悪いから教えてはくれないだろうし。

 そもそも悪霊というのは復讐とか怨恨とか、何か具体的な目的とか理由とかを持っていないのではないだろうか。つまり悪いことをやりたいからやっているだけ。こうなると妖怪とかお化けに近くなる。
 悪霊というのはただ単に悪い。
 しかしまあ、怨霊ほどスケールの大きいことはやらないようだが。

 何はともあれ、「霊」そのものは悪くないというか、悪いものではない。
 人間だった頃の恨みつらみが霊を悪くするのだろう。
 ただ、世の中には「逆恨み」というのがあって、これで怨霊とか悪霊になられたら、生きてる人間は災難である。
 気をつけようと思っても、気のつけようが無い。

 (来週に続く)

【言っておきたい古都がある・102】