古今東西、信仰深き者にご利益あり?

初午祭 しるしの杉 by 五所光一郎

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桜見は勿論、梅見にも、まだ機が熟していない。
寒さに臆病となってコタツでテレビを見ていても、株の暴落など不景気な情報や、中国毒ギョーザに殺人事件と暗くて恐ろしいニュース。
あるいは、政治、行政の怠慢によるまたもやの不祥事か、我関せずと言わんばかりのお笑いバラエティが映し出されている。
「ニッポン大丈夫か」と、怒りを超えた虚無感が去来するばかりである。

こんな休日を脱するために、日帰り温泉や映画館に向かうことしばしば、ついには見ない映画はほぼない上に、日帰り温泉も懐との相談がいるようになってしまった。
そんなこんなで、さして懐も痛まず休日気分を味わい、しかも先人の知恵に肖れると、一昨日の10日には「三千院の大根焚き」に出かけ無病息災を願い、大原の里で世俗を忘れ長閑さを味わった。

そして今朝、12日は今年の初午であったことを聞いて、出勤前の雨模様の中、伏見稲荷大社の「初午祭」に参詣してきた。2月の貴重な催事であるにも関わらずすっかり忘れていたのだ。

五穀豊穣家内安全商売繁盛の福徳を願い、全国各地からの人出で初詣に劣らぬ活気があった。「初午詣」のこの日は、稲荷信仰に篤い人達がとりわけ多いことが、丁寧な参拝の仕様を見ればわかる。
裕福そうな参詣者が多いにも関わらず、定められた見物料も入山、入館料もいらない。自らの志で自由に行えばいいのだ。それでも、高額なお札などが次々と授けられている。
小生のとはご利益が違うのだろうかと、つい下世話なことを考えてしまった。

稲荷詣の題材は『今昔物語』や『大鏡』などの古典にも数多く登場しており、その賑わいや庶民信仰の熱が古くから高かったことがわかる。
彼の清少納言は『枕草子』にて、「2月午の日の暁に、稲荷の社に詣で、中ノ社のあたりにさしかかるともう苦しくて、なんとか上ノ社までお参りしたいものだと念じながら登っていくと、もはや巳の時(午前10時頃)ばかりになり、暑くさえ感じられるようになってきて、涙をこぼしたいほどわびしい思いをしつつ休息していると、40余りになる普段着の婦人が、“私は今日7度参りをするつもりです。もう3回巡りましたからあと4回くらいは何でもありませんよ”と、往き会った知人らしい人に告げてさっさと行くのをながめては、誠にうらやましく思ったものである」と、このように記している。

全国四万社とされる稲荷社の総本社である「伏見のお稲荷さん」の最大の大祭として、初午祭は平安時代より続いている。その時代より霊験あらたかとされている「しるしの杉」は、今も初午の日のみの限定品の御符(しるし)で、お山の杉の小枝であるそれを身につけて持ち帰ったところだ。
その昔、紀州熊野詣の行き帰りには、このお稲荷さんに必ず参詣するのが習わしであったという。いかほどのご利益があるかはあずかり知らないが、今日はお山を巡れなかったのが気がかりである。

世俗のニュースに接することより、京都にある風物詩などに接する時の方が安堵を覚えるのである。

今週末は再度伏見へ出向きたい。稲荷のお山詣でと、伏見の酒蔵開き(17日〜)が待っている。


初午 稲荷大社
http://inari.jp/a_oshirase/indexmap.html

酒蔵開き 伏見銘酒協同組合
http://www.shinise.ne.jp/options/shinise/pa_toppage.asp?temp_id=133&shp=160

【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
5121-080212-2/12

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