送り鐘が撞かれ、五山の送り火の灯りも落ち、お盆の帰省ラッシュも一段落した。
秋の訪れを待つばかりと言われるが、おっとどっこい、京都には地蔵盆が残されている。
地蔵菩薩の縁日である8月24日の前後3日間に、各町内にあるお地蔵さんに前垂れをつけ、灯籠を立て、提灯を吊るし、供え物をして、子供が地蔵の前に詣り、その加護を願う習わしである。
地蔵菩薩が、親より先に亡くなり、賽の河原で苦しんでいる子供を救うという伝説により、子供の守り神として信仰されている。
幼少の頃地蔵盆に集うと、怪談話を聞かされたり、肝試しと称して暗がりや墓地に行かされた。その場は強がってみるものの、闇の中に何がいるのだろうと肝を冷やしていたことは否定できない思い出である。幸い、実際に妖怪に出逢うことはなかったが…。
さて、その妖怪たちも、今は用意されているようだ。
17日から24日までの間、嵐電では夜間の特別な妖怪電車が走らされ、日除けを降ろした薄暗い満員の車内には、青白い蛍光灯の下に妖怪が乗り合わせているという。
不気味な音と暗闇に浮かぶ怪しげな装飾の中、人混みを掻き分けて襲いかけてくることもあるようだ。
もし、乗客が妖怪に扮装していると、50円で乗車出来るというはからいもある。
どうやら、嵐電沿線から市内北西部が妖怪のお気に入りの所であるようだ。
嵐電嵯峨駅徒歩5分のところには、陰陽師安倍晴明(921〜1005)公墓所として残る「晴明塚」がある。
毎年9月26日の安倍晴明公の命日に晴明神社によって嵯峨墓所祭が執り行われている。
嵐電帷子ノ辻駅を経て終点北野白梅町駅を降りると、怨霊鎮めに創建された北野天満宮があり、千本通を北へ上ると、冥界を行き来したと云われる小野篁卿(802〜853)建立の千本閻魔堂、大江山の酒呑童子討伐で名を馳せた源頼光(948〜1021)が土蜘蛛を射止めた塚(源頼光朝臣塚)のある上品蓮台寺、その背後は葬送地蓮台野と続く。
また、その嵐電北野白梅町を南へ、西大路一条の東には大将軍商店街があるのだが、これが奇妙な商店街で、別名「妖怪ストリート」と呼ばれている。
商店街の地図には「百鬼店舗地図」と銘打たれ、26店の商店の店先には妖怪人形が置かれている。
店舗のキャラクター人形と言い捨ててしまう方もいるだろうが、そうは行かない。
何故なら、大将軍商店街は、安倍晴明公が式神を隠した一条戻り橋と同じ一条通りにあること、平安時代の怪異伝説にある付喪神が走ったところと符号すること、西大路東の商店街入り口辺りには陰陽道の星神「大将軍堂(大将軍八神社)」があり、それは平安京の北西を鎮護すべく風水により魔界との結界として創建されたもので、今も現前と商店街の中にあることなど、不思議なエリアと思わざるを得ない。
そこへ来て、その一条通の住人たちは商店街振興に立ち上がり、商店街の空店舗を「百鬼夜行資料館」に生まれ変わらせている。因果因縁というものがあるのだろうか。
心理学者は妖怪の生息する魔界は、自らの心の中にあるのだという。だとすれば人の数ほどの場所や物に存在するわけだが、嵐電沿線界隈、周辺に見る歴史の痕跡は何を語っているのだろううか。
嵐電の乗継駅帷子ノ辻駅を経て太秦広隆寺駅を降りると、東映太秦映画村である。
8月31日までの夏休み期間中に行われている「映画村妖怪まつり」は、お化け屋敷やアトラクションなどの妖怪イベントとして恒例であるが、24日16時には、「世界妖怪会議」が昨年に続き成人向けに開かれる。京極夏彦氏や村上健司氏らによるトークイベントが網羅され、妖怪の周辺について探求される予定である。
映画村は撮影所跡の観光施設で、歴史に伝承される魔界の話は聞こえてこない。
怪談、妖怪映画が製作された事実はあるが、「妖怪まつり」とは、偶然の一致なのか。知られざるところで、魔界と深い縁があるのかもしれない。
映画村の南に位置する太秦広隆寺(蜂岡寺)は、秦河勝が建立した秦氏の氏寺である。
その河勝は、聖徳太子より天下を治める呪術を任せられていた(日本書紀巻第24)、とある。現在は広隆寺横の大酒神社に「芸能の祖神 大避大明神」として合祀されている。
古代史の謎とされている秦氏一族とは関係あるまいか。
今年も妖怪電車が発車します (京福電鉄)
http://www.keifuku.co.jp/yokai08.html
妖怪まつり大祭 (東映太秦映画村)
http://www.eigamura30.com/event/special/radio_talk.html
大将軍八神社
http://www.daishogun.or.jp/
晴明神社 京一条戻り橋
http://www.seimeijinja.jp/history/index.html
千本ゑんま堂
http://yenmado.jp/
妖怪ストリート 大将軍商店街
http://www.kyotohyakki.com/web_0317/top%20kasetu.html
広隆寺 (DonPanchoのホームページにようこそ)
http://www.bell.jp/pancho/travel/hata/koryuji.htm
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
秋の訪れを待つばかりと言われるが、おっとどっこい、京都には地蔵盆が残されている。
地蔵菩薩の縁日である8月24日の前後3日間に、各町内にあるお地蔵さんに前垂れをつけ、灯籠を立て、提灯を吊るし、供え物をして、子供が地蔵の前に詣り、その加護を願う習わしである。
地蔵菩薩が、親より先に亡くなり、賽の河原で苦しんでいる子供を救うという伝説により、子供の守り神として信仰されている。
幼少の頃地蔵盆に集うと、怪談話を聞かされたり、肝試しと称して暗がりや墓地に行かされた。その場は強がってみるものの、闇の中に何がいるのだろうと肝を冷やしていたことは否定できない思い出である。幸い、実際に妖怪に出逢うことはなかったが…。
さて、その妖怪たちも、今は用意されているようだ。
17日から24日までの間、嵐電では夜間の特別な妖怪電車が走らされ、日除けを降ろした薄暗い満員の車内には、青白い蛍光灯の下に妖怪が乗り合わせているという。
不気味な音と暗闇に浮かぶ怪しげな装飾の中、人混みを掻き分けて襲いかけてくることもあるようだ。
もし、乗客が妖怪に扮装していると、50円で乗車出来るというはからいもある。
どうやら、嵐電沿線から市内北西部が妖怪のお気に入りの所であるようだ。
嵐電嵯峨駅徒歩5分のところには、陰陽師安倍晴明(921〜1005)公墓所として残る「晴明塚」がある。
毎年9月26日の安倍晴明公の命日に晴明神社によって嵯峨墓所祭が執り行われている。
嵐電帷子ノ辻駅を経て終点北野白梅町駅を降りると、怨霊鎮めに創建された北野天満宮があり、千本通を北へ上ると、冥界を行き来したと云われる小野篁卿(802〜853)建立の千本閻魔堂、大江山の酒呑童子討伐で名を馳せた源頼光(948〜1021)が土蜘蛛を射止めた塚(源頼光朝臣塚)のある上品蓮台寺、その背後は葬送地蓮台野と続く。
また、その嵐電北野白梅町を南へ、西大路一条の東には大将軍商店街があるのだが、これが奇妙な商店街で、別名「妖怪ストリート」と呼ばれている。
商店街の地図には「百鬼店舗地図」と銘打たれ、26店の商店の店先には妖怪人形が置かれている。
店舗のキャラクター人形と言い捨ててしまう方もいるだろうが、そうは行かない。
何故なら、大将軍商店街は、安倍晴明公が式神を隠した一条戻り橋と同じ一条通りにあること、平安時代の怪異伝説にある付喪神が走ったところと符号すること、西大路東の商店街入り口辺りには陰陽道の星神「大将軍堂(大将軍八神社)」があり、それは平安京の北西を鎮護すべく風水により魔界との結界として創建されたもので、今も現前と商店街の中にあることなど、不思議なエリアと思わざるを得ない。
そこへ来て、その一条通の住人たちは商店街振興に立ち上がり、商店街の空店舗を「百鬼夜行資料館」に生まれ変わらせている。因果因縁というものがあるのだろうか。
心理学者は妖怪の生息する魔界は、自らの心の中にあるのだという。だとすれば人の数ほどの場所や物に存在するわけだが、嵐電沿線界隈、周辺に見る歴史の痕跡は何を語っているのだろううか。
嵐電の乗継駅帷子ノ辻駅を経て太秦広隆寺駅を降りると、東映太秦映画村である。
8月31日までの夏休み期間中に行われている「映画村妖怪まつり」は、お化け屋敷やアトラクションなどの妖怪イベントとして恒例であるが、24日16時には、「世界妖怪会議」が昨年に続き成人向けに開かれる。京極夏彦氏や村上健司氏らによるトークイベントが網羅され、妖怪の周辺について探求される予定である。
映画村は撮影所跡の観光施設で、歴史に伝承される魔界の話は聞こえてこない。
怪談、妖怪映画が製作された事実はあるが、「妖怪まつり」とは、偶然の一致なのか。知られざるところで、魔界と深い縁があるのかもしれない。
映画村の南に位置する太秦広隆寺(蜂岡寺)は、秦河勝が建立した秦氏の氏寺である。
その河勝は、聖徳太子より天下を治める呪術を任せられていた(日本書紀巻第24)、とある。現在は広隆寺横の大酒神社に「芸能の祖神 大避大明神」として合祀されている。
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http://www.seimeijinja.jp/history/index.html
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妖怪ストリート 大将軍商店街
http://www.kyotohyakki.com/web_0317/top%20kasetu.html
広隆寺 (DonPanchoのホームページにようこそ)
http://www.bell.jp/pancho/travel/hata/koryuji.htm
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
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