お店の創り出す空気感がカフェをリラックスの場にしてくれる

おにかいカフェ by 五所光一郎

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カフェという単語は、’90年代中頃に湧き出てきたように記憶している。ミレニアムとともに決定的に使い囃され、およそ15年になるだろう。

カフェという記号を始めて耳にしたときは流石に戸惑った。

昭和一桁生まれの父に言わせれば、「カフェーは女給が酌をして洋酒を飲ませてくれる飲食店や」と。

小生にすれば、喫茶店のことをコーヒーショップとか、ティハウスとか呼び変えただけで洒落てると思っていた頃に、フランス語でいう嫌なインテリが使う単語であった。

それで、日本でいう新たなカフェとはどんなのだと思ったものである。

というのは、CLUBやDJという同類の記号にも戸惑ったもので、こちらは20年位前になるだろうか。
バブル景気が崩壊しディスコが消え、日本にクラブカルチャーの息吹が芽ばえていた頃である。

小生の青春時代であれば、CLUBはお姉さんが横に座るナイトクラブのことでお金持ちのおじさんの行くところ、DJは今のラジオのパーソナリティを指すことばてあった。

それが20年後には、最も魁の夜遊びの若者の使う新たな記号となり、不器用な所為か、小生のなかにある辞書の追加訂正が、なかなかできなかった。

今年(平成21年)の6月には、最先端のCLUBであった西麻布の“Space Lab Yellow”が閉店するという話も耳にした。

およそ20年ごとに新たな転換の周期があるとすると、新たな記号が生まれる予兆なのかもしれない


話を戻すが、カフェはカジュアルに飲み物や菓子・軽食などを出す店と、到ってシンプルで、「茶店(さてん)」そのものの言い換えで使われているから安心したものだ。
その代わりにカフェバーという響きの良いカテゴリーに興味がそそられた。

小生の喫茶店歴は堺町三条のイノダコーヒーで止まったままである。
アメリカンクラブハウスサンドとアラビアンコーヒーは今も止められない。
小生には、ゲーム喫茶やドトール、漫画喫茶やインターネット喫茶、スタバさえも車窓の景色にしか過ぎないのである。

誰にも居心地の良いところがあるはずで、居心地の良さを感じるところは千差万別かもしれない。
小生にとって、奇をてらった店や行列のできる店は行く気がしない。
ましてや脚光を浴びているうちは尚更である。
行くこと自体が恥ずかしいと思っている。

例えば行列のできる店なら、
オーダーをするまでに、椅子に座るまでに、長らくの間立ち並ぶなど我慢できない苦痛である。
如何に欲するものを提供していようと、その苦痛は屈辱感にまで増幅していくのである。

終には、行列ができる位の品質の店が、お客を並ばせている状況に対処策を講じていないことに疑問を抱いてしまう。
そのうちブームが去ることが見え隠れするし、去ったなら品質を確かめに出掛けることにする。

つまり、行列ができるという風潮に踊らされずに、好みにあう店に出かけ、良ければ通うことにしている。

気位の高さを口にするほど持ち合わせている訳ではないが、行列ができるまで何故知らなかったのだろうか、どうして行かなかったのだろうかという気恥ずかしさを、職業柄持ってないわけではない。

というか、行列に並ぶことを良しとする貪欲な学習意欲がないのである。
何れ行列のできる店になるところを見つけることに美学を持っているのだろう。

行列のできる店は大都会に任せておけばよいので、京都には似合わないとも思っている。但し、10分程度で始めの行列が解消してゆくところなら、それを行列とは思っていない。

例えば、出町のふたばで、平日の朝、お年寄りに混じって豆餅を買うときは抵抗がない。ここに予約や整理券がなくても、苦痛を感じるほどの時間でもない。

一方、休日に河原町や四条通に行くのも苦手である。
歩き疲れてひと休みするのに喫茶店に入ろうとすると、表通りでは並ばなくては入れないからである。

勢い裏通りに向かうが、寛ぎ感のあった純喫茶も名所見物風のお客に席を隣すると、興醒めしてしまうのである。
その店の優劣ではなく、創り出される空気にである。

疲れた足を休めるだけならスタバでもマクドでも良いのだが、表通りにあって混雑は極まりなく、仮に空いていたとしても、そこでは気分までは休まらない。

そこへ来て、月刊京都CF!6月号(5月1日発売)で、編集部が特集したのが、「おにかいカフェ」である。

「おにかい」とは「鬼かい?」ではなく、「お二階さん」の「おにかい」である。

何やら怪しげで、ろーじの先にある隠れ家的な取り置きの楽しみを抱かせてくれている。
路面店にはない、俗界との結界の象徴ともなる階段が、ろーじに似ている。
ろーじは水平移動の結界で、階段は垂直移動にある結界を示している。

日本神話では地上の国の他に登場する異界がある。天の国と根の国である。
つまり天の国は二階のカフェ、根の国は地下のカフェと言い換えることができる。

少々大袈裟に聞こえるかも知れないが、京都のカフェはそんな意義を秘かに持っていると、小生は考えている。

仔細ついては是非一読され、お馴染みカフェの持ち札に加えられると良い。

京都での社寺仏閣だけが心を癒す場所ではないことを、おにかいカフェは教えている。


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