幻想的幽玄な灯りの楽しみ方

冬の蛍 嵐山花灯路  by 五所光一郎

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苔むす庭に、散り紅葉が光を浴び配されている。
自然の為す色とりどりの粋な計らいに目を奪われてしまう。
そして頭上には、木々に掴まり彩どりを残す楓が散りを拒み、冬紅葉を楽しませてくれている。
その頃に「嵐山花灯路」は催されている。

毎年恒例となり好評を呼ぶ中、冬の観光客にも京都人にもすっかり風物詩として定着してきた様だ。初回が63万1千人、2年目が97万3千人の人出で、3年目は100万人を超したと聞く。暖が恋しい時季なのに、春の東山花灯路に迫る勢いである。

眩いばかりの都会の明るさの対極にある光が花灯路にはある。
日本人の遺伝子に組み込まれているであろう何処かの部分が刺激され、癒されているに違いない。小生も「日本に京都があって良かった」という感慨を抱く時である。

でなければ、嵐山一帯の冬の寒空の下を散策するはずもない。
老若問わず普段以上に寄り添い歩き、心の距離も縮められているのだろうか、表情に優しさが伺える。
冬の澄んだ空気の中に佇む花灯路の灯りの揺らめきと、静かに発光し続ける様を指して、「冬の蛍」だと誰かが例えた。
粉雪でも舞い飛び初雪となれば、粉雪が蛍に変わり乱舞が見られるやも知れない。
その日がくれば、あらためて出掛けることにしたい。

散策してみると、灯りの彩りは場所毎に実に変化に富んでいる。
イルミネーションは光る明るさで、花灯路の明るさは灯りであることに納得させられる。
その柔らかい灯りは自然や景観と溶け合い、コラボレーションして豊かな陰影を見事に産み出しているのである。
歩きたくなる。撮りたくなる。浸りたくなる。

野宮神社から大河内山荘へと向かう竹林のライトアップには眩しさはなく、白と青のコントラストで、優しく秘められた和の緑が浮かんでいる。
在京各流派家元等により、八箇所に、華麗に大きく活けられた様々な作品も灯りと花の調べを奏で、露地行燈と相まり幻想空間を更に高めていた。
また、細く複雑に入り組んだ奥嵯峨辺りでは、光り灯篭のわかり良い道先案内があり、ほっこりとさせられる。

甲乙夫々に好みはあろうが、圧巻といえば、やはり渡月橋大堰川を前方に借景した嵐山のライトアップである。
紅葉した黄や赤の中に、緑、青、紫などの多彩な色の木々が浮かび出され、屋形船が発色し水面にも同色の姿を現す。片や渡月橋下流からの眺めは、金色に光り輝かん如く渡月橋が浮き上がっている。
ただ呆然と立ちすくみ、無言で時が流れるのを待つかのような一瞬を覚えた。

法輪寺での友禅行燈や、二尊院での紅葉ライトアップを眺めた後、大覚寺までは無料ジャンボタクシーを利用し、大沢の池で巨大提灯を楽しむなど、盛りだくさんの内容を下調べされていくと、お好みのテーマでの楽しみ方ができるだろう。

花燈籠(はなどうろう)は蓮(はす)の造花などで飾ったり、花模様を描いたりした供養の盆灯籠のことを指すが、花灯路(はなとうろ)は現世の小生を癒してくれるものだった。


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