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京阪電車に乗り込んだ。
お稲荷さんへの初午詣は正月の初詣に匹敵する人出であるからだ。
乗車区間は鳥羽街道駅から京阪伏見稲荷駅の一駅である。
マイカーで出掛けると、師団街道の渋滞にうんざりとし、稲荷周辺駐車場での空車待ちで疲れ果ててしまう。
そこで、数年来一駅乗車で参詣している。所謂パークアンドライドである。
鳥羽街道駅の東西には徒歩1分圏内にコインパーキングがある。その上、昼間の最大料金も800円限りなのである。
鳥羽街道駅からお稲荷さんまでは徒歩で楽々の距離であるが、電車を使うとドアツードアになり、稲荷山参詣の体力が温存できる上、乗車中は遠足気分になれるのが良い。
京阪伏見稲荷駅を降りると、左手東側に東山三十六峰の最南端である稲荷山が見える。左手に坂を上がると、琵琶湖疏水に架かる橋にJRの踏切・・・と続く。
それらを渡ると、道路両脇には門前街の商店が立ち並び、参詣の行き帰りの人波に呑まれる。商店や屋台からの客寄せの囃子声が賑わしく、不景気風を感じるものなどなく、小生も陽気な気分にさせられ、鼻歌までもがでる有様である。
醤油の焦げた香ばしい匂いを鼻が捕らえた。本町通との辻角にある「祢ざめ家」の店先では、「鶉(うずら)」と「鰻」が焼かれている。変わることのない、いつもながらの光景である。鶉を焼くその手でいなり寿司を握る様子も例年通りである。
祢ざめ家の店内は、同じメニューを注文していても、その順序に関係なく運ばれてくる。
おしとやかに待っていると、いつ運ばれてくるか判らないくらいにごった返し、店員さんもパニック状態の忙しさである。しかし、運び終えるとお勘定だけは間違いなく速い。小生も苦情を言いたいところだが、味が良いので、それでも毎年立ち寄る。この日も帰路に立ち寄り、鯖寿司といなり寿司にきつねうどん、そして、焼き鶉だった。
その辻の山手に大きな朱の鳥居が立っている。人の流れはそちらに向かっている。商店と露天商が並び、稲荷大社楼門に続く神幸道である。
小生の習慣は神幸道を避け、向かって右手に本町通をJR稲荷駅の方に進む。
人並みを避けるだけの訳ではない。神幸道は裏参道であり、JR稲荷駅前の表参道の鳥居を潜り、楼門、本殿を正面に見て参詣したいからである。
神幸道(裏参道)は、参詣後の帰路に、立ち並ぶ商店や露天商の屋台をじっくりと楽しむために残しておくのである。
表参道の途中、左手にある儀式殿にて朱印を頂き、手水舎で両手と口を禊ぎ、楼門、拝殿、本殿、神楽殿と進みお参りし、この日限りの「験(しるし)の杉」を授かる。
その後に、創建に関わる秦氏、荷田氏を祀る社を始めに、立ち並ぶ末社に参詣しながら、斎場右手の電通奉納の大鳥居を先頭とする大鳥居群を経て、千本鳥居を潜ってゆく。
千本鳥居を抜けると、お稲荷さんの眷属である白狐を祀る奥社へのお参りである。「おもかる石」で願いが叶うかを伺い、そして、一路稲荷山の四つ辻を目ざし市内を一望して茶店にて休憩、下の社、中の社、上の社にお参りし、おびただしい「お塚」に信仰の篤さを学ぶ。
上の社がある一の峰が標高233mの稲荷山のほぼ頂上になる。
ここからは下りが続き、御膳谷奉拝所を経て、四つ辻に戻り、下山の途をゆく。
2時間余りの社殿、神蹟を巡る四キロの行程をゆく参拝を「お山めぐり」という。
この道を巡ると、稲荷山三ヶ峰に神が降臨したと伝わる説話が真実味を帯びてくるから不思議である。誠に清々しくも霊験あらたかな気持ちにしてもらえる。
下山途中の大杉社辺りの土手に落ちていた杉皮を拾って持ち帰った。
「験の杉」を授かっているにも関わらず、お山に入ると、小生は妙にそんな気分にさせられるのである。
「 きさらぎや けふ初午のしるしとて 稲荷の杉は もとつ葉もなし 」
(新撰六帖 藤原光俊朝臣)
古くに、こんな和歌が詠まれているが、今とて、小生はその様子に頷ける。
二月初午は、稲荷大神が稲荷山に鎮座された記念日で、「初午大祭」と称されている。
山を降りてくると、神馬の前の広場に、老女を囲む人垣が見えた。
大道芸に見入っているのだろうかと、野次馬根性で近寄ってみた。
「家相方位相談公開」と記されている。説得力のありそうな話術だが、遠巻きなので話が聞き取れない。占いの栞を販売している様子も伺えない。
また一方では、「観相」と書かれた易者の囲いの前に列ができている。
縁日気分にひたりたかったのか、小生は、大鳥居南に奉納されている二対一体のおきつねさんの石像に、小石を投げ入れ運試しをしてみた。
見事に、顔の部分に開いた空洞を小石が抜けた。
喜ぶことなのかどうか判らないが、嬉しくて、神幸道に並ぶ店への足取りが軽やかになった。
八軒ある神具店を覗き、一番短い点灯時間が2分という豆蝋燭を見つけた。
今まで使用していたのは10分だったのだので大喜びである。新旧買い替えの神具のほかに、新たな発見を得たという、ちっちゃい話だが小市民の営みのひとつである。
豆蝋燭を買った後は、稲荷詣恒例の雀(すずめ)の焼き鳥を「稲福」で買い食いしながら、更に屋台で鮎の塩焼きを買い求め、七味にドライフルーツ、生姜漬なと袋が一杯になっきたのに、稲荷煎餅をお土産にと押入れる始末である。
大原女姿で栃餅や草餅に柴漬けを売る屋台があったが、その暖簾に「小原女」と書いてあるのに気づき、思わず買うのを止め、笑ってしまった。
何はともあれ、あれこれと、ほのぼのとした一日を送らせてもらった初午詣である。
伏見稲荷大社
http://inari.jp/index.html
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
お稲荷さんへの初午詣は正月の初詣に匹敵する人出であるからだ。
乗車区間は鳥羽街道駅から京阪伏見稲荷駅の一駅である。
マイカーで出掛けると、師団街道の渋滞にうんざりとし、稲荷周辺駐車場での空車待ちで疲れ果ててしまう。
そこで、数年来一駅乗車で参詣している。所謂パークアンドライドである。
鳥羽街道駅の東西には徒歩1分圏内にコインパーキングがある。その上、昼間の最大料金も800円限りなのである。
鳥羽街道駅からお稲荷さんまでは徒歩で楽々の距離であるが、電車を使うとドアツードアになり、稲荷山参詣の体力が温存できる上、乗車中は遠足気分になれるのが良い。
京阪伏見稲荷駅を降りると、左手東側に東山三十六峰の最南端である稲荷山が見える。左手に坂を上がると、琵琶湖疏水に架かる橋にJRの踏切・・・と続く。
それらを渡ると、道路両脇には門前街の商店が立ち並び、参詣の行き帰りの人波に呑まれる。商店や屋台からの客寄せの囃子声が賑わしく、不景気風を感じるものなどなく、小生も陽気な気分にさせられ、鼻歌までもがでる有様である。
醤油の焦げた香ばしい匂いを鼻が捕らえた。本町通との辻角にある「祢ざめ家」の店先では、「鶉(うずら)」と「鰻」が焼かれている。変わることのない、いつもながらの光景である。鶉を焼くその手でいなり寿司を握る様子も例年通りである。
祢ざめ家の店内は、同じメニューを注文していても、その順序に関係なく運ばれてくる。
おしとやかに待っていると、いつ運ばれてくるか判らないくらいにごった返し、店員さんもパニック状態の忙しさである。しかし、運び終えるとお勘定だけは間違いなく速い。小生も苦情を言いたいところだが、味が良いので、それでも毎年立ち寄る。この日も帰路に立ち寄り、鯖寿司といなり寿司にきつねうどん、そして、焼き鶉だった。
その辻の山手に大きな朱の鳥居が立っている。人の流れはそちらに向かっている。商店と露天商が並び、稲荷大社楼門に続く神幸道である。
小生の習慣は神幸道を避け、向かって右手に本町通をJR稲荷駅の方に進む。
人並みを避けるだけの訳ではない。神幸道は裏参道であり、JR稲荷駅前の表参道の鳥居を潜り、楼門、本殿を正面に見て参詣したいからである。
神幸道(裏参道)は、参詣後の帰路に、立ち並ぶ商店や露天商の屋台をじっくりと楽しむために残しておくのである。
表参道の途中、左手にある儀式殿にて朱印を頂き、手水舎で両手と口を禊ぎ、楼門、拝殿、本殿、神楽殿と進みお参りし、この日限りの「験(しるし)の杉」を授かる。
その後に、創建に関わる秦氏、荷田氏を祀る社を始めに、立ち並ぶ末社に参詣しながら、斎場右手の電通奉納の大鳥居を先頭とする大鳥居群を経て、千本鳥居を潜ってゆく。
千本鳥居を抜けると、お稲荷さんの眷属である白狐を祀る奥社へのお参りである。「おもかる石」で願いが叶うかを伺い、そして、一路稲荷山の四つ辻を目ざし市内を一望して茶店にて休憩、下の社、中の社、上の社にお参りし、おびただしい「お塚」に信仰の篤さを学ぶ。
上の社がある一の峰が標高233mの稲荷山のほぼ頂上になる。
ここからは下りが続き、御膳谷奉拝所を経て、四つ辻に戻り、下山の途をゆく。
2時間余りの社殿、神蹟を巡る四キロの行程をゆく参拝を「お山めぐり」という。
この道を巡ると、稲荷山三ヶ峰に神が降臨したと伝わる説話が真実味を帯びてくるから不思議である。誠に清々しくも霊験あらたかな気持ちにしてもらえる。
下山途中の大杉社辺りの土手に落ちていた杉皮を拾って持ち帰った。
「験の杉」を授かっているにも関わらず、お山に入ると、小生は妙にそんな気分にさせられるのである。
「 きさらぎや けふ初午のしるしとて 稲荷の杉は もとつ葉もなし 」
(新撰六帖 藤原光俊朝臣)
古くに、こんな和歌が詠まれているが、今とて、小生はその様子に頷ける。
二月初午は、稲荷大神が稲荷山に鎮座された記念日で、「初午大祭」と称されている。
山を降りてくると、神馬の前の広場に、老女を囲む人垣が見えた。
大道芸に見入っているのだろうかと、野次馬根性で近寄ってみた。
「家相方位相談公開」と記されている。説得力のありそうな話術だが、遠巻きなので話が聞き取れない。占いの栞を販売している様子も伺えない。
また一方では、「観相」と書かれた易者の囲いの前に列ができている。
縁日気分にひたりたかったのか、小生は、大鳥居南に奉納されている二対一体のおきつねさんの石像に、小石を投げ入れ運試しをしてみた。
見事に、顔の部分に開いた空洞を小石が抜けた。
喜ぶことなのかどうか判らないが、嬉しくて、神幸道に並ぶ店への足取りが軽やかになった。
八軒ある神具店を覗き、一番短い点灯時間が2分という豆蝋燭を見つけた。
今まで使用していたのは10分だったのだので大喜びである。新旧買い替えの神具のほかに、新たな発見を得たという、ちっちゃい話だが小市民の営みのひとつである。
豆蝋燭を買った後は、稲荷詣恒例の雀(すずめ)の焼き鳥を「稲福」で買い食いしながら、更に屋台で鮎の塩焼きを買い求め、七味にドライフルーツ、生姜漬なと袋が一杯になっきたのに、稲荷煎餅をお土産にと押入れる始末である。
大原女姿で栃餅や草餅に柴漬けを売る屋台があったが、その暖簾に「小原女」と書いてあるのに気づき、思わず買うのを止め、笑ってしまった。
何はともあれ、あれこれと、ほのぼのとした一日を送らせてもらった初午詣である。
伏見稲荷大社
http://inari.jp/index.html
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
5220-130117-2月 初午の日