春の花見を「梅見・観梅」「桜見・観桜」というが、秋の紅葉見物は「紅葉狩」と呼ばれている。
紅葉を取って食する訳ではないのに、どうして「紅葉狩」というのか、疑問を抱いた。
イチゴ狩・ブドウ狩・梨狩・潮干狩・鷹狩などのように、「狩」は「果物などを採る」「野鳥や小動物を捕まえる」との意味で使用するものだと理解している。
実りの秋には「松茸狩」「柿狩」「稲刈り」などもあるが、もっぱら秋の実は「銀杏拾い」「栗拾い」のように「拾い集める」のが主流のように思う。
また現在では、春の「お花見」には酒食をともなう宴を催すが、秋はイチョウや楓などの葉の色を見て楽しみ、宴を見受けることは少ない。
「紅葉狩」とは山野に紅葉をたずねて楽しむこと。
言い換えとして「観楓(かんぷう)。紅葉見。」と辞書にはあるが常用はされていない。
そして、お花見のことは、決して桜狩・梅狩とは言わない。
「紅葉狩」とはどこに語源があるのだろうか。
英訳でも「maple-tree viewing / enjoy the autumn leaves」と「狩る」の意は見当たらない。
縷々調べてみると、能・歌舞伎に「紅葉狩り」の演題があった。
観世小次郎信光の謡曲の傑作である。
観世流能 「紅葉狩 鬼揃」のあらすじはこうだ。
錦繍の山奥に鹿狩りに来た平維茂(たいらのこれもち)将軍一行は、信濃国の戸隠山で美しい女たちの宴に誘われる。この世のものとは思えぬほど美しい女たちの酌に杯を重ね、優美な舞に維茂は酔い伏してしまう。やがて日も暮れて夜となり男山石清水八幡の神の使いが夢にあらわれる。神助は女たちが鬼であることを伝え、神剣を与える。目を覚ました維茂に、配下の鬼女たちが炎を吐いて次々と襲い掛かってくる。その本性を現した鬼を退治するというストーリーである。
平安時代中頃の、平維茂の武勇伝の一つであるが、紅葉見の宴があったことがわかる。
そして、室町時代に書かれたこの作品から「紅葉狩り」という言葉が使われ、広まって行ったようだ。
万葉集には「紅葉」を謡ったものが多く、平城京の頃より、「紅葉合」として愛されてはいたが、「紅葉見」として行事化はしてはいなかった。
平安時代に、嵐山は大堰(おおい)川にて催された「嵯峨天皇の観楓舟遊びの宴」が初の紅葉見で、その後貴族たちの間に流行りだし、庶民が「紅葉狩」を模し行事化してきたのは江戸時代からである。
更に、「紅葉狩り」が季語・単語として歌集に出てくるのは、意外にも鎌倉時代である。
歌集『夫木和歌抄(ふぼくわかしゅう)』が初出であると記されている。
「時雨行く片野の原の紅葉狩 たのむかげなく吹く嵐かな」
何故「狩り」というかの説は見当たらなかった。
紅葉見・観楓の歴史の流れから推察すると・・・。
桓武平氏の頃より、公家など貴族で狩猟をしないものがあらわれる。
その代わりに草花を眺めながらの酒宴や和歌を詠むことが頻繁になってきた。
獣狩りをもっぱらとする武士に対し、実りの秋収穫の秋に、自然を愛でることの風流を「紅葉狩」と。
おそらく、鹿狩りの武士達を見、貴族達が冷ややかに、もじり呼ぶようになったと考えられる。
0704紅葉狩 (小学館発行「万有百科大事典」)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gln/66/6680/66800704.htm
1318植物の世界「紅葉狩りの系譜」
(朝日新聞社発行「植物の世界」)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gln/13/1318.htm
sheerさんの旅行記:京都早朝日帰り紅葉狩り
http://4travel.jp/traveler/sheer/album/10011657/
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
紅葉を取って食する訳ではないのに、どうして「紅葉狩」というのか、疑問を抱いた。
イチゴ狩・ブドウ狩・梨狩・潮干狩・鷹狩などのように、「狩」は「果物などを採る」「野鳥や小動物を捕まえる」との意味で使用するものだと理解している。
実りの秋には「松茸狩」「柿狩」「稲刈り」などもあるが、もっぱら秋の実は「銀杏拾い」「栗拾い」のように「拾い集める」のが主流のように思う。
また現在では、春の「お花見」には酒食をともなう宴を催すが、秋はイチョウや楓などの葉の色を見て楽しみ、宴を見受けることは少ない。
「紅葉狩」とは山野に紅葉をたずねて楽しむこと。
言い換えとして「観楓(かんぷう)。紅葉見。」と辞書にはあるが常用はされていない。
そして、お花見のことは、決して桜狩・梅狩とは言わない。
「紅葉狩」とはどこに語源があるのだろうか。
英訳でも「maple-tree viewing / enjoy the autumn leaves」と「狩る」の意は見当たらない。
縷々調べてみると、能・歌舞伎に「紅葉狩り」の演題があった。
観世小次郎信光の謡曲の傑作である。
観世流能 「紅葉狩 鬼揃」のあらすじはこうだ。
錦繍の山奥に鹿狩りに来た平維茂(たいらのこれもち)将軍一行は、信濃国の戸隠山で美しい女たちの宴に誘われる。この世のものとは思えぬほど美しい女たちの酌に杯を重ね、優美な舞に維茂は酔い伏してしまう。やがて日も暮れて夜となり男山石清水八幡の神の使いが夢にあらわれる。神助は女たちが鬼であることを伝え、神剣を与える。目を覚ました維茂に、配下の鬼女たちが炎を吐いて次々と襲い掛かってくる。その本性を現した鬼を退治するというストーリーである。
平安時代中頃の、平維茂の武勇伝の一つであるが、紅葉見の宴があったことがわかる。
そして、室町時代に書かれたこの作品から「紅葉狩り」という言葉が使われ、広まって行ったようだ。
万葉集には「紅葉」を謡ったものが多く、平城京の頃より、「紅葉合」として愛されてはいたが、「紅葉見」として行事化はしてはいなかった。
平安時代に、嵐山は大堰(おおい)川にて催された「嵯峨天皇の観楓舟遊びの宴」が初の紅葉見で、その後貴族たちの間に流行りだし、庶民が「紅葉狩」を模し行事化してきたのは江戸時代からである。
更に、「紅葉狩り」が季語・単語として歌集に出てくるのは、意外にも鎌倉時代である。
歌集『夫木和歌抄(ふぼくわかしゅう)』が初出であると記されている。
「時雨行く片野の原の紅葉狩 たのむかげなく吹く嵐かな」
何故「狩り」というかの説は見当たらなかった。
紅葉見・観楓の歴史の流れから推察すると・・・。
桓武平氏の頃より、公家など貴族で狩猟をしないものがあらわれる。
その代わりに草花を眺めながらの酒宴や和歌を詠むことが頻繁になってきた。
獣狩りをもっぱらとする武士に対し、実りの秋収穫の秋に、自然を愛でることの風流を「紅葉狩」と。
おそらく、鹿狩りの武士達を見、貴族達が冷ややかに、もじり呼ぶようになったと考えられる。
0704紅葉狩 (小学館発行「万有百科大事典」)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gln/66/6680/66800704.htm
1318植物の世界「紅葉狩りの系譜」
(朝日新聞社発行「植物の世界」)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gln/13/1318.htm
sheerさんの旅行記:京都早朝日帰り紅葉狩り
http://4travel.jp/traveler/sheer/album/10011657/
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
5026-051108-秋
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