秋祭り酣(たけなわ)の10月の日々が始まっている。
北野天満宮の野菜や雑穀で装われた「ずいき神輿」(1日〜5日)や粟田神社(7日〜8日)は祇園祭山鉾の原型といわれる剣鉾巡行などをはじめとして、毎日のように氏神さんの祭が目白押しで気もそぞろである。そしておまけに、22日は京都三大祭のひとつ「時代祭」も迫ってきている。
小生の氏神さんは夏祭りの神社なので、祭の当事者としての気忙しさはないが、行事以外にも、「まつり・祭」とつく秋の催事もあるからして大忙しである。
その合間を縫って、今秋の行楽メニューを征覇しなければならない。
そのテーマは「美食芸術」としている。
つまり、食欲の秋と芸術の秋を同時に一度で楽しむ目論見である。
簡単に言うと、美味い旬のものを、映りのいい器で、お似合いの小道具に囲まれて食べようということだ。
ということで、本年最後の「京都大骨董祭(パルスプラザ)」に出かけた。
骨董祭は和洋中のアンティークが一同に会しているのだが、展覧会のようにガラスケースに収まっているわけではなく、美術芸術の逸品も手にとって談義できるから優れている。
今回、やけに小生の目に付いたのが「北大路魯山人」の陶器である。
ペットボトル茶のCMに登場したり、TVで特集が組まれたりしている所為だろうか。
魯山人の備前焼徳利とぐい飲みを持っていた骨董屋の店主の話では、先月の15日に「北大路魯山人 特別オークション(ディスカバリーナショナルオークション)」が東京築地で開催され、出品80点全品が落札されたという。今や魯山人の作品は、美術品全般の活況を占うプライスリーダーとなっているようで、売るより集めるのが大変だそうだ。
探しものは魚を形どった箸置き(箸枕)だが、手が出せるものがあるだろうかと心配になってくる。これだけは魯山人写しや魯山人風では我慢できないからである。
何故拘っているかというと、織部焼の魚形箸置きはこんもりと立体感があり、上薬(うわぐすり)の緑と土の渋茶色のバランスが程よく、写真を見ているだけでも生命感を感じるからだ。それにも増して、そもそもこの「箸置き」を発案し、最初につくったのが魯山人であるから、殊更なのである。
京料理の歴史にあっても、魯山人が現れるまで(1883〜1959)に箸置き(枕)はなかったのである。
確かに京懐石のお膳の上に元来箸置き(枕)はなく、箸は直に置かれている。箸を休めるとき
は膳の縁にかけているのだ。
膳のないときにはと、魯山人は西洋のフォークレストを見て、思い立ったのであろうか。
同様にお猪口では小さすぎ、さりとて湯飲みでは大きすぎると「ぐい呑」を考
案し、大胆に盛り付ける平たい「まな板皿」を欲し、窯で焼き上げた魯山人の
その考え方の柔軟さに関心を抱く。
碗も皿も盃も先人が編み出していたものであるが、箸置き(枕)は彼が発案者で
あるから故、魯山人作に拘るのだ。
骨董市へ来て買い求め、美術投資をしているわけではないのだから、全ての器を魯山人作に…とまでは思わないし、とても財布が許さない。いずれにしても小生には箸置きがお似合いなのだ。
魯山人は、「どんな素晴らしい絵付けがされている皿であっても皿は皿である。
だから、料理が盛り付けられて、皿と料理のどちらもが引き立てあってひとつの景色ができ、かつ各々が皿と料理として独自の主張がないことにはいただけない」と語っている。
それ故、規格のものには満足せず、 自ら窯を開き、料理に合う器を作り出し始めたのだ。
「やきもの作るんだって みなコピーさ なにかしらコピーでないものはないのだ。但し そのどこを狙うかという狙い所、まね所が肝要なのだ」と、語録集にあった。
伝統と創生を体現した京都生まれの魯山人に真似ぶことは多い。
そんなこんなと思いを馳せながら、店主との談話に京都大骨董祭で丸一日を楽しんだが、お目当ての「織部の箸置き」には出逢えず、探し物の行楽は続きそうだ。
「旦那さん 探しもんは何ですか」
10月行事目次(京都市観光文化情報システム)
http://kaiwai.city.kyoto.jp/raku/modules/festivals/index.php
京の風物詩 北野天満宮 ずいき祭 (くまさんの目線)
http://kumasan.town-web.net/fubutsushi10/kyo24-zuiki-2005.html
粟田神社大祭(doco-ic)
http://www.doco-ico.net/about/index.html
第37回京都大骨董祭
http://www.gomoku-do.com/saiji/photo_1.htmNHK
魯山人の器
http://www.nhk.or.jp/tsubo/arc-20060512.html
落札オークション結果
http://www.d-n-a.co.jp/auction/pdf/ar070915.htm
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
北野天満宮の野菜や雑穀で装われた「ずいき神輿」(1日〜5日)や粟田神社(7日〜8日)は祇園祭山鉾の原型といわれる剣鉾巡行などをはじめとして、毎日のように氏神さんの祭が目白押しで気もそぞろである。そしておまけに、22日は京都三大祭のひとつ「時代祭」も迫ってきている。
小生の氏神さんは夏祭りの神社なので、祭の当事者としての気忙しさはないが、行事以外にも、「まつり・祭」とつく秋の催事もあるからして大忙しである。
その合間を縫って、今秋の行楽メニューを征覇しなければならない。
そのテーマは「美食芸術」としている。
つまり、食欲の秋と芸術の秋を同時に一度で楽しむ目論見である。
簡単に言うと、美味い旬のものを、映りのいい器で、お似合いの小道具に囲まれて食べようということだ。
ということで、本年最後の「京都大骨董祭(パルスプラザ)」に出かけた。
骨董祭は和洋中のアンティークが一同に会しているのだが、展覧会のようにガラスケースに収まっているわけではなく、美術芸術の逸品も手にとって談義できるから優れている。
今回、やけに小生の目に付いたのが「北大路魯山人」の陶器である。
ペットボトル茶のCMに登場したり、TVで特集が組まれたりしている所為だろうか。
魯山人の備前焼徳利とぐい飲みを持っていた骨董屋の店主の話では、先月の15日に「北大路魯山人 特別オークション(ディスカバリーナショナルオークション)」が東京築地で開催され、出品80点全品が落札されたという。今や魯山人の作品は、美術品全般の活況を占うプライスリーダーとなっているようで、売るより集めるのが大変だそうだ。
探しものは魚を形どった箸置き(箸枕)だが、手が出せるものがあるだろうかと心配になってくる。これだけは魯山人写しや魯山人風では我慢できないからである。
何故拘っているかというと、織部焼の魚形箸置きはこんもりと立体感があり、上薬(うわぐすり)の緑と土の渋茶色のバランスが程よく、写真を見ているだけでも生命感を感じるからだ。それにも増して、そもそもこの「箸置き」を発案し、最初につくったのが魯山人であるから、殊更なのである。
京料理の歴史にあっても、魯山人が現れるまで(1883〜1959)に箸置き(枕)はなかったのである。
確かに京懐石のお膳の上に元来箸置き(枕)はなく、箸は直に置かれている。箸を休めるとき
は膳の縁にかけているのだ。
膳のないときにはと、魯山人は西洋のフォークレストを見て、思い立ったのであろうか。
同様にお猪口では小さすぎ、さりとて湯飲みでは大きすぎると「ぐい呑」を考
案し、大胆に盛り付ける平たい「まな板皿」を欲し、窯で焼き上げた魯山人の
その考え方の柔軟さに関心を抱く。
碗も皿も盃も先人が編み出していたものであるが、箸置き(枕)は彼が発案者で
あるから故、魯山人作に拘るのだ。
骨董市へ来て買い求め、美術投資をしているわけではないのだから、全ての器を魯山人作に…とまでは思わないし、とても財布が許さない。いずれにしても小生には箸置きがお似合いなのだ。
魯山人は、「どんな素晴らしい絵付けがされている皿であっても皿は皿である。
だから、料理が盛り付けられて、皿と料理のどちらもが引き立てあってひとつの景色ができ、かつ各々が皿と料理として独自の主張がないことにはいただけない」と語っている。
それ故、規格のものには満足せず、 自ら窯を開き、料理に合う器を作り出し始めたのだ。
「やきもの作るんだって みなコピーさ なにかしらコピーでないものはないのだ。但し そのどこを狙うかという狙い所、まね所が肝要なのだ」と、語録集にあった。
伝統と創生を体現した京都生まれの魯山人に真似ぶことは多い。
そんなこんなと思いを馳せながら、店主との談話に京都大骨董祭で丸一日を楽しんだが、お目当ての「織部の箸置き」には出逢えず、探し物の行楽は続きそうだ。
「旦那さん 探しもんは何ですか」
10月行事目次(京都市観光文化情報システム)
http://kaiwai.city.kyoto.jp/raku/modules/festivals/index.php
京の風物詩 北野天満宮 ずいき祭 (くまさんの目線)
http://kumasan.town-web.net/fubutsushi10/kyo24-zuiki-2005.html
粟田神社大祭(doco-ic)
http://www.doco-ico.net/about/index.html
第37回京都大骨董祭
http://www.gomoku-do.com/saiji/photo_1.htmNHK
魯山人の器
http://www.nhk.or.jp/tsubo/arc-20060512.html
落札オークション結果
http://www.d-n-a.co.jp/auction/pdf/ar070915.htm
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
5067-071009-10月
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