「エーンヤァラァヤアー」の掛け声も聞かれなくなり、「まわせぃ まわせぃー」の掛け声も24日の後祭を終えると、28日の「後の神輿洗い」を最後に聞けなくなる。
祇園会(祭)も終盤に入ってきたという思いが募ってくる。そろそろ梅雨明けとなる訳だ。
梅雨時に旬を迎えるのが鱧である。この時期淡水魚なら鮎に鰻など数あるが、海水魚は珍重である。従って、梅雨明け宣言の出ぬ内に、生命力溢れる鱧をさっばりといただくのは最高の贅である。
先人は良く知ったもので、祇園会(祭)のことを「鱧祭」と呼び、この時にいただけるご馳走のもてなしを称して「祭鱧」と呼んでいる。
祭りの頃になると、室町を中心とする中京、下京では「鱧寿司」を用意し、西陣を中心とする上(かみ/上京区)の人が「鯖寿司」を持って挨拶に来る習わしがあり、鱧と鯖を手土産として振る舞われていたと父は話す。
宅配便で届けられる「お中元」が主流となった今は、この習わしも形を変えている。
「変わらん付き合いは難しいもんや。そやからご挨拶を絶やさんと、心込めていうたもんなんや」と話しは続く。「相変わりませず・・・。」これが口上であったと。
そもそも活魚の入らなかった都で、獰猛で生命力が強く、日持ちのする鱧は重宝され、その鱧を美味しく食べるため、工夫された包丁捌きで生まれた鱧の骨切り料理が、公家武家達の贅沢料理であった。
室町末期から江戸時代において、それを見た室町の旦那衆が、祇園祭に招いたお客に振る舞い、川床などで持て成した。
これが一気に町衆にも広がり、祭りのご馳走に生まれ変わり、ハレの料理となった。
今では鱧づくし料理として、食通をうならせる京の高級料理となっているのだ。
そして、祭りといえばお寿司がつきもの。にぎり寿司は江戸前に張り合うつもりはないが、関西の箱寿司、押し寿司の中でも「鱧寿司、鯖寿司、鰻寿司」は京都の寿司として譲れない。
最近俄かに「京野菜寿司」の人気が高く、江戸前に迫っているのも嬉しい限りだ。
さて、その肝心のネタである。鯖は若狭から鯖街道を、鱧は淡路から八軒屋(天神橋・天満橋の川岸)を経て上り船で伏見まで、「十石舟」や「担ぎ屋」により運ばれていた。
「担ぎ屋」の担ぐブリキ製の四角いカンカンの中で、「つ」の字型になり運ばれる鱧は、締まりが良く、持ちが良いだけでなく、味も良いと板前は言う。生簀で運ばれる「活け鱧」なら締めて血抜きしたあと、5時間位置いてから食べるのに限るらしい。
シナ海で獲れる韓国産の鱧は脂ののりが良く、中央市場では現在主流となっているが、漁獲量の減った淡路産のチリメンハモを頑なに使っているのは「堺萬(室町二条西)」をはじめ数少ない。
錦市場の店主の話によると、どうもその違いは皮の固さが微妙に違うらしい。骨きり包丁を入れたときの「手応えと音がわからんとなぁ」と言う。
コンドロイチンを多く含む「鱧皮」だけに気になるところだが、まだまだ鱧が食べきれていない証なのか。素人の小生には、どちらも歯切れの良い「シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、‥」としか聞こえない。
次に、鱧をいただくにはどこが利口にいただけるかだ。
京の台所を担う錦市場で鱧を扱うところは、『近新東店』『鳥羽庄』『にしき』『まる伊』『丸弥太』の五軒がある。
そのうちの一つ『まる伊』も京都の高級料亭に卸している。
その選別された素材が料理に生かされてない事や、あまりにも高価に提供されている事に疑問を持ち、とうとう鱧ふぐ専門店「味どころ まる伊(間之町二条東)」を開いていると聞くが、是非賞味し、能書きも持ち帰りたいものだ。
目新しいところではこんな情報もある。
「京料理 わた亀(西大路四条西)」の5代目が、120種を超える「鱧料理」をまとめた書籍を出版している。新しく工夫したメニューが半数を超え、「バルサミコソースと鱧のおとし」など挑戦的で頼もしい。このメニューをいただくなら、仕出し屋が開いた「わた亀ダイニング」も外せないところである。
京の高級料理の枠を出た鱧が、フレンチ、イタリアンの店のメニューにも登場してきている。ウェスティン都ホテル京都(東山区蹴上)のメニューにまで「鱧のポワレと万願寺とうがらしバスク風」が加わっていた。
この流れは、京の「祭鱧」に新たな賑わいが生まれ、俄かに注目度が上がっていることを指している。やはり京の町衆の元気は存在しているということか。
昨今の京都ブームに便乗しているだけの店とは一線を画し、ほんまものとして安心できるというものだ。
京都 鱧(はも)料理
〜鱧単品料理 鱧十一撰〜
http://t-kafuu.com/hamo/
日本の旬・魚の話 (神港魚類)
http://www.maruha-shinko.co.jp/uodas/syun/5-hamo.html
わた亀
http://www.kyo-ryori.com/shop.php?s=99
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
祇園会(祭)も終盤に入ってきたという思いが募ってくる。そろそろ梅雨明けとなる訳だ。
梅雨時に旬を迎えるのが鱧である。この時期淡水魚なら鮎に鰻など数あるが、海水魚は珍重である。従って、梅雨明け宣言の出ぬ内に、生命力溢れる鱧をさっばりといただくのは最高の贅である。
先人は良く知ったもので、祇園会(祭)のことを「鱧祭」と呼び、この時にいただけるご馳走のもてなしを称して「祭鱧」と呼んでいる。
祭りの頃になると、室町を中心とする中京、下京では「鱧寿司」を用意し、西陣を中心とする上(かみ/上京区)の人が「鯖寿司」を持って挨拶に来る習わしがあり、鱧と鯖を手土産として振る舞われていたと父は話す。
宅配便で届けられる「お中元」が主流となった今は、この習わしも形を変えている。
「変わらん付き合いは難しいもんや。そやからご挨拶を絶やさんと、心込めていうたもんなんや」と話しは続く。「相変わりませず・・・。」これが口上であったと。
そもそも活魚の入らなかった都で、獰猛で生命力が強く、日持ちのする鱧は重宝され、その鱧を美味しく食べるため、工夫された包丁捌きで生まれた鱧の骨切り料理が、公家武家達の贅沢料理であった。
室町末期から江戸時代において、それを見た室町の旦那衆が、祇園祭に招いたお客に振る舞い、川床などで持て成した。
これが一気に町衆にも広がり、祭りのご馳走に生まれ変わり、ハレの料理となった。
今では鱧づくし料理として、食通をうならせる京の高級料理となっているのだ。
そして、祭りといえばお寿司がつきもの。にぎり寿司は江戸前に張り合うつもりはないが、関西の箱寿司、押し寿司の中でも「鱧寿司、鯖寿司、鰻寿司」は京都の寿司として譲れない。
最近俄かに「京野菜寿司」の人気が高く、江戸前に迫っているのも嬉しい限りだ。
さて、その肝心のネタである。鯖は若狭から鯖街道を、鱧は淡路から八軒屋(天神橋・天満橋の川岸)を経て上り船で伏見まで、「十石舟」や「担ぎ屋」により運ばれていた。
「担ぎ屋」の担ぐブリキ製の四角いカンカンの中で、「つ」の字型になり運ばれる鱧は、締まりが良く、持ちが良いだけでなく、味も良いと板前は言う。生簀で運ばれる「活け鱧」なら締めて血抜きしたあと、5時間位置いてから食べるのに限るらしい。
シナ海で獲れる韓国産の鱧は脂ののりが良く、中央市場では現在主流となっているが、漁獲量の減った淡路産のチリメンハモを頑なに使っているのは「堺萬(室町二条西)」をはじめ数少ない。
錦市場の店主の話によると、どうもその違いは皮の固さが微妙に違うらしい。骨きり包丁を入れたときの「手応えと音がわからんとなぁ」と言う。
コンドロイチンを多く含む「鱧皮」だけに気になるところだが、まだまだ鱧が食べきれていない証なのか。素人の小生には、どちらも歯切れの良い「シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、‥」としか聞こえない。
次に、鱧をいただくにはどこが利口にいただけるかだ。
京の台所を担う錦市場で鱧を扱うところは、『近新東店』『鳥羽庄』『にしき』『まる伊』『丸弥太』の五軒がある。
そのうちの一つ『まる伊』も京都の高級料亭に卸している。
その選別された素材が料理に生かされてない事や、あまりにも高価に提供されている事に疑問を持ち、とうとう鱧ふぐ専門店「味どころ まる伊(間之町二条東)」を開いていると聞くが、是非賞味し、能書きも持ち帰りたいものだ。
目新しいところではこんな情報もある。
「京料理 わた亀(西大路四条西)」の5代目が、120種を超える「鱧料理」をまとめた書籍を出版している。新しく工夫したメニューが半数を超え、「バルサミコソースと鱧のおとし」など挑戦的で頼もしい。このメニューをいただくなら、仕出し屋が開いた「わた亀ダイニング」も外せないところである。
京の高級料理の枠を出た鱧が、フレンチ、イタリアンの店のメニューにも登場してきている。ウェスティン都ホテル京都(東山区蹴上)のメニューにまで「鱧のポワレと万願寺とうがらしバスク風」が加わっていた。
この流れは、京の「祭鱧」に新たな賑わいが生まれ、俄かに注目度が上がっていることを指している。やはり京の町衆の元気は存在しているということか。
昨今の京都ブームに便乗しているだけの店とは一線を画し、ほんまものとして安心できるというものだ。
京都 鱧(はも)料理
〜鱧単品料理 鱧十一撰〜
http://t-kafuu.com/hamo/
日本の旬・魚の話 (神港魚類)
http://www.maruha-shinko.co.jp/uodas/syun/5-hamo.html
わた亀
http://www.kyo-ryori.com/shop.php?s=99
【参照リンクには、現在なくなったものがあるかもしれません。順次訂正してまいりますが、ご容赦ください。】
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