続 さくら咲いた

SAKURA 2008 No.3 by 五所光一郎

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京都の今年の開花宣言は1日だった。
毎年西ノ京にある京都地方気象台のソメイヨシノを基準に発表されている。
それ以来小生は大路小路を行き交う毎日を過ごしている。フットワークが良いのはのお陰である。

今週は市内のが地面に舞い降り、花びらの絨毯といった風情である。
そして、白、桃、紅色の花を着けていた木々は、若葉色や薄紅色の若葉をまとい、葉を楽しませてくれ始めた。
新緑の葉を肌に感じながら、あと一息、遅咲きを追いかける用を足さなければならない。小生は未練がましいのだろうか。

東堀川通沿いに白い八重が目に優しく映りだすと、仁和寺の「御室」が薄紅色に開きだし見頃となる。
御室の声が聞こえると、千本閻魔堂の「普賢象」も応えるかのように膨らみ、開き始める。そして、洛中のの花々が咲き終えるのを見届けたかのように、京北は常照皇寺の「九重」などか満開見頃となり、京のの幕が下りる。

常照皇寺のを訪れる者は、名木があるからとはいえ、余程の好きであろう。

桂川と弓削川に分かれる京北町から、さらに桂川沿いに花背に向かうと、市街からは往復丸一日はかかる上、交通の便も限られている。
おまけに、門前には、村人手作りの草もち屋が一軒しかないほどの、華やかさなどない茅葺の山寺である。

しかし、行ってしまえば、巨木で樹齢600年の天然記念物「九重枝垂」、一重と八重が一枝に咲く「御車返しの」、御所から株分けされた「左近の」と名高い名木に出会うことができる。

そればかりではない。北朝の第一代天皇を僅か2年足らずで廃位となった、悲運の光厳天皇が世俗を捨て最後の地とした場所に、同じと空気を味わえるわけである。
きっと、大満足の帰路となるはずだ。

今年は氏神さんや檀家寺院に、人知れず咲く枝垂を満喫させてもらった。
春うららの空気感にゆるりとした時が流れていた。
近所に幼子の声が響き、豆腐売りにも出逢い、幼き頃の記憶が蘇った。そして、境内の静寂の中に咲き誇り、ものの憐れを教えてくれるたちとの出逢いがあった。
千本通、寺の内通、御霊前通、小川通、寺町通。西陣界隈には化粧をしていない普段着の京都のが今も生きている。

更に今年は、紅しだれコンサートに足を向けた。平安神宮神苑のライトアップされた紅枝垂には圧倒される豪華さと煌びやかさを見た。神宮の朱の色にも、造形にも引けをとらない立派なたちであった。唐突にロームのイルミネーションパークが頭を過ぎった。そして、15メートル間隔で随所に立つイベントスタッフのブルゾン姿を見た。
もう、の憐れなど見ることはできなかった。あれは東京である。豪華絢爛である。
の円山公園で、アゲアゲーと奇声を発しダンスする酔客を見るに似ている。

ともあれ、の楽しみ方は、人それぞれに、いろいろとあって良い。
小生は全てを「やすらいまつり」が始まっていると思え、見えてくるからだ。
の花びらが散るように疫が舞い降りませんようにと、風流に飾り立て、願い踊っている現代の姿であろう。

5134-080415-春

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