千枚漬で名を馳せる「たかしん」。聖護院→かぶら→千枚漬。その連想が万人にメジャーだとしても、頑としてそれは冬の商品だ。いくら看板商品だろうと、どんなに欲しがろうと、ない季節にはない物である。だが夏には胡瓜のしば漬が爽やかだし、3年越しの梅干はいつも懐かしい味でそこにある。真面目に漬物を作るとはそういうことだ。気候に準じ、よけいな付加価値に便乗せず、素材が素直に発酵する手助けをすること。店の暖簾に伝わる教えは「見栄を張らんと味で勝負」、「漬ける時には楽しい気持ちで」。熟成しているのは、真っ直ぐな気持ちそのものなのだろう。
胡瓜を漬込む塩水は「鰻のタレと一緒。何度も足して使う」。長年かけて乳酸菌を豊富に含んだ水だ
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