鷲尾家の長男の嫁にのみ皆伝されてきた「おばんざい」が、先祖に因んで「公家味噌(くげみそ)」と名付けられたのは今から12年前。某ホテルの料理長に持たせた手みやげが宿泊客の口に運ばれて以来、称賛の声と矢の催促が止まなくなった。1日がかりの大仕事に変わろうとも「誰かに手伝わせることはできない」と25年間台所に立ち続ける寿美子さん。「おふくろの味には届かへんなぁ」との主人の言葉に奮起したことも、年配客のため具材を柔らかくした際に義母に釘を刺されたことも、「今はいい思い出」。嫁を鍛えた「秘伝の味」には、甘いも辛いもエピソードごと含まれている。
「満足のいく味噌ができるようになるまで3、4年掛かりました」と3日に一度のペースで味噌作りに勤しむ鷲尾寿美子さん。
具材の歯ざわりと味噌の甘辛さの後を追って、秘伝の香辛料がピリッと効いてくる。ご飯が欲しくなる調味法は米穀店ならではか
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