「京都の漬物は野菜の色を変えてしもたらあかん」。ご主人が堅く守る京漬物の定義を、「花てっぽう」の胡瓜と新生姜のコントラストや「もぎ茄子」の茄子紺が最も鮮やかに物語る。この仕上がりを左右するのは、塩加減や温度管理、重石と時間の配分などが絡み合う、人と自然の采配のみ。文明の利器といえば冷蔵庫くらいの、古来の環境に限りなく近い空間で造られる新顔の漬物は、ご近所衆の口伝によって少しずつ裾野を広げてきた。「どこに出しても恥ずかしない」という京都人のお墨付きが、鮮やかな色と味わいの奥にしっかりと刻まれている。
「自然が相手やから、同じを目指しても同じもんはできひん。それがウチの値打ちちゃいますやろか」と家内工業の陣頭指揮を執る2代目当主・鳥山茂さん。
しば漬等の定番も欠かさないが、キャベツやセロリなどを用いる創作漬物作りにも枚挙に暇がない