「嗜好品やからね」。素材選びと胡麻・おのみ・芥子の手煎りは主人に任せるが、その分量は客の好きに任せられる。「山椒を多く」「おのみは抜いて」…、オーダーメイドの七味。客の前で作り始める新鮮な香りと誂え向きの辛さで、職人一人しか立てなかった小さな店の頃には、京都には珍しい行列が街の名物にもなっていた。移転と拡張で家族三人が同時に店に立てるようになり、客を並ばせる負担は軽減。それと同様に軽いのが「御為返し」の心配。日常使いの七味なら貰う側の気は軽いが、嗜好を汲んで贈った気持ちは軽んじられない。その匙加減もまた絶妙。
元は北野商店街にあった店を継ぐ三代目ご主人。「父親の味をよく知る人に厳しく評価された頃もあった」が、今も先々代からの味はそのまま守られている
5295-03091703-