手間を引き受け、取らせない
場合を読む心もまた一つの手間

高橋拓児さん 贈りものの熟練者と極上品 by 月刊ClubFame 2003年9月号

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木乃婦 高橋拓児さん 
高橋拓児さんとは…】
'68年京都生まれ。日本料理と同時にフレンチや中華など他の食と文化を学べる環境をと、'95年東京「吉兆」へ修業に入る。この時、店で出していた一本のワインとの出会いを機にその魅力に陶酔。'00年の帰郷後ソムリエの免許を取得する。以後、ワインに合わせた特別献立など、昭和10年創業の京料理店「木乃婦」の三代目として新風を起こしつづける。今夏もイタリアンにヒントを得た冷しうどんを登場させるなど、その風に滞りはない
 京料理「木乃婦」の名を耳にする時、今その話題の多くは三代目・高橋拓児さんの事だろう。ソムリエの資格も持ち、写真にあるフカヒレ鍋などでは伝統の鎖から上手に抜け出すが、吸い物の地など手綱となる伝統には自らそれを締める事を忘れていない。料理に映るその絶妙なバランス感覚が、食に通じる人々の注意を逸らさないでいるのだ。
 その特長的な部分をつくる一端にもなったのが、東京「吉兆」に身を置いた5年間だ。本当のワインを飲んだのも、仏料理店で本物のサービスやインテリアに刺激を受けたのもこの時期だという。京料理人として腕を磨いた「吉兆」や、見識を広め世話になった他の料理店を、いざ訪ねるという際、料理を生業とする相手だ、十分に美味いものにも更に価値を重ねたくなる。あえて「日持ちのしない物を」…。
 通常の贈りもの選びの基準からすればマイナスのように思えるが、これは「その日に用意しなければならない」手間に、相手を思う特別な気持ちが込められているということだ。当日の朝に品を受け取り、その瑞々しさがくすまぬ内に一筋に相手の元へと向かう。「緑庵」の葛饅頭を手渡された時、その一日が自分の為にあった事を切に感じ取るだろう。それが贈りものに重ねられた思いだ。
 つまり、これは「おしなべて」ではない。相手が調理場の一人ひとりとなった場合、忙しい仕事の中でその時食べられる人もいれば明日、明後日となる事もある。なま物でありながら受け取る側には数日間のクオリティが期待でき、取り分ける手間も要らないもの。実は実際に「木乃婦」の調理場で頂き物をし、これはいいな、と感心させられて以後贔屓にしているのが「菓欒」の西賀茂チーズだ。
 「この大文字の少し後が、西賀茂の船形だったね」、「今頃はもうどちらも大きく燃え上がっているでしょうね…」。二つの菓子を前にして、思いを馳せる遠い空の風物詩。京都の料理人が帰った後には、こんな会話が生まれていた。



美しいさしと艶が、濃厚な甘さと一緒に消えていくトロの握り。胡麻豆腐と、スープには金華ハムを使った殊更贅沢なフカヒレ鍋。どちらも「これを出さないとお客さんが納得しない」という名物の品。12000円のコースから

京料理 木乃婦 ■京都市下京区新町仏光寺岩戸町416 TEL 075・352・0001



高橋さんおすすめひとつ
菓欒」の西賀茂チーズ
http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5301



高橋さんおすすめもひとつ
「緑菴」の送り火
http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5300


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関連歳時/文化
京のおもたせ
緑庵
葛饅頭
菓欒
西賀茂チーズ

関連施設/場所
京都市下京区岩戸町416
木乃婦
吉兆

関連人物/組織
高橋拓児

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