さて、冥界での判決が下って何もかも終ったのかと思いきや、私のツアーでは特別サービスとして地獄八景のご案内というオプションを付けている。
万一、冥界の確定判決で地獄に行くことが決まっても、そこがどんな所かあらかじめ知っていれば少しは気が楽になるというもの。
前回までと同じように「京都ミステリー紀行・冥界編」のコースである松原通を散策しながら地獄の世界を垣間見るとしよう。
●地獄八景観光ガイド
【入り口は地獄門】
地獄は8つの階層に分かれている。これからひとつづつ紹介していくが、その8つの地獄の前に門をくぐらなければならない。それが地獄門である。
ここをくぐれば気温は摂氏40度以上、不快指数100以上という世界が待ち受けている。
そこは我々が住む現世の世界から5万キロメートル離れているという。
地表から地球の中心までが約6000キロだから「地獄は地下にある」というのは間違いのようである。どうやら地球とは別世界なのだ。
さらに、ひとつの地獄の大きさは一辺が10万キロの立方体だそうで、これが箱だとすれば地球が400個入る計算になる。それが8つも重なっていて、しかも最下層の地獄は他の7つよりも大きいそうだから、これはもう天文学的数字である。
しかも地獄では時間の流れも違う。現世と一番近い時間のところでも、地獄の一昼夜は現世の900万年。ここに落ちた人間が苦しみながら暮らさなければならない期間は現世の時間に換算して1兆6425億年!
行きたくありませんね。
ではこのとんでもない世界をご案内いたします。
【こちらは現世の続き】
写真は徳萬大神という小さなお社。昔はこんなのがあちこちに一杯あったのだろう。で、この辺は徳萬町という地名になっている。江戸時代なんかは、このお社がコミュニティーの中心だったということ。
なにも本願寺のような巨大な施設だけがシンボルになるのではなく、こんな小さいものでも隣に共同で利用する小屋を建てて公民館として使っていたと思われる。
●地獄八景観光ガイド
【第1景は等活地獄】
ここは殺生をしたものが行く。人殺しばかりですね。だから死人同士がここでも殺し合いをする。
さらに地獄の鬼が巡回していて、適当な死者を見つけると鉄棒で叩き潰す。あるいは刀で死者をみじん切りにする。
厄介なことに現世ならばこれで死んでしまうので、それで苦しみは終るのだが、地獄にいる人たちはすでに死んでいるから、それ以上死ぬことはない。つまり苦しみは永遠に続く。
原形を留めぬほどに潰されたり切られたりした死者はどうなるのでしょう?
あるとき、苦しみだけのはずの等活地獄に涼しい風が吹いて来る。これは御仏の御慈悲なのだろうか?
いいえ、そうではありません。
この風で死者は元に戻ります。元通りの姿になる。つまり前と「等しい」形で「復活」するので「等活」地獄なのである。
で、復活してどうなるかというと、再び殺し合いの中に入る。また鬼もやって来る。同じことの繰り返し。
これが地獄での寿命が尽きるまで延々と続くのである。
何のために復活させるのか?
それは苦しみを終らせないために。地獄には苦しみから皆さんを解放してくれる永遠の眠りはない。来る日も来る日も殺し殺される日常が何時までも何時までも続くのである。
これでも地獄としては一番浅い位置にあります。これから段々深い地獄をご案内しよう。
【こちらは現世】
ここは新玉津島神社。北村季吟ゆかりの神社なのだが、このコースを定例でやっていたとき、「北村季吟というのは名前はご存知かもしれませんが」と言っても、誰も知らなかった。知っていたのは最初の1年間でたった1人だけ。季吟さんがちょっと気の毒になりました。
流石にこの人の弟子は誰もが知っていましたけど。
ふふふ、「弟子」って、誰でしょう?
●地獄八景観光ガイド
【第2景は黒縄地獄】
ここは盗みを働いた者が行く。
「墨縄」という大工さんの道具があるが、この地獄の名はそこから来ている。
まず鬼たちが墨縄を使って死者の身体に線を引いていく。何本も何本も引いていくのである。これが「切り取り線」になるのだな。
線を引き終わると、今度はノコギリが出てきて、引かれた線に沿ってギーコ、ギーコと、死者の体を切っていく。麻酔も何もないので、痛いですよ〜。
細かくバラバラにされて撒き散らかされてしまうのであるが、等活地獄と同じく、涼風が吹いてくると散らばった肉片が一箇所に集まり元通りの死者に戻る。そして再び線を引かれる。
何度も何度も切られては元に戻り、切られては元に戻るというのを繰り返して、終ることがないのだ。
これだけではない。黒縄地獄にはもっと他の責め苦もある。
たとえば、山と山の間に鉄の綱が渡してあり、その綱の下では地獄の釜が口を開けて煮えたぎっている。死者はここを綱渡りで渡らされる。大抵の者は途中で落ちる。地獄の釜にドボンとはまってグツグツと煮られるわけである。
ほどよく煮えたところで鬼が救い上げ、放置しておくのだが、ここでまた涼風が吹くと……もう言わなくても分かりますね。
あるいは、真っ赤に焼けた鉄の網の中へ死者を落とす。熱さのあまりもがけばもがくほど綱は死者の身体に絡まり苦痛は倍化される。
行きたくありませんね。
この下のさらに深いところにはまた別の地獄があります。その話はまた来週。
万一、冥界の確定判決で地獄に行くことが決まっても、そこがどんな所かあらかじめ知っていれば少しは気が楽になるというもの。
前回までと同じように「京都ミステリー紀行・冥界編」のコースである松原通を散策しながら地獄の世界を垣間見るとしよう。
●地獄八景観光ガイド
【入り口は地獄門】
地獄は8つの階層に分かれている。これからひとつづつ紹介していくが、その8つの地獄の前に門をくぐらなければならない。それが地獄門である。
ここをくぐれば気温は摂氏40度以上、不快指数100以上という世界が待ち受けている。
そこは我々が住む現世の世界から5万キロメートル離れているという。
地表から地球の中心までが約6000キロだから「地獄は地下にある」というのは間違いのようである。どうやら地球とは別世界なのだ。
さらに、ひとつの地獄の大きさは一辺が10万キロの立方体だそうで、これが箱だとすれば地球が400個入る計算になる。それが8つも重なっていて、しかも最下層の地獄は他の7つよりも大きいそうだから、これはもう天文学的数字である。
しかも地獄では時間の流れも違う。現世と一番近い時間のところでも、地獄の一昼夜は現世の900万年。ここに落ちた人間が苦しみながら暮らさなければならない期間は現世の時間に換算して1兆6425億年!
行きたくありませんね。
ではこのとんでもない世界をご案内いたします。
【こちらは現世の続き】
写真は徳萬大神という小さなお社。昔はこんなのがあちこちに一杯あったのだろう。で、この辺は徳萬町という地名になっている。江戸時代なんかは、このお社がコミュニティーの中心だったということ。
なにも本願寺のような巨大な施設だけがシンボルになるのではなく、こんな小さいものでも隣に共同で利用する小屋を建てて公民館として使っていたと思われる。
●地獄八景観光ガイド
【第1景は等活地獄】
ここは殺生をしたものが行く。人殺しばかりですね。だから死人同士がここでも殺し合いをする。
さらに地獄の鬼が巡回していて、適当な死者を見つけると鉄棒で叩き潰す。あるいは刀で死者をみじん切りにする。
厄介なことに現世ならばこれで死んでしまうので、それで苦しみは終るのだが、地獄にいる人たちはすでに死んでいるから、それ以上死ぬことはない。つまり苦しみは永遠に続く。
原形を留めぬほどに潰されたり切られたりした死者はどうなるのでしょう?
あるとき、苦しみだけのはずの等活地獄に涼しい風が吹いて来る。これは御仏の御慈悲なのだろうか?
いいえ、そうではありません。
この風で死者は元に戻ります。元通りの姿になる。つまり前と「等しい」形で「復活」するので「等活」地獄なのである。
で、復活してどうなるかというと、再び殺し合いの中に入る。また鬼もやって来る。同じことの繰り返し。
これが地獄での寿命が尽きるまで延々と続くのである。
何のために復活させるのか?
それは苦しみを終らせないために。地獄には苦しみから皆さんを解放してくれる永遠の眠りはない。来る日も来る日も殺し殺される日常が何時までも何時までも続くのである。
これでも地獄としては一番浅い位置にあります。これから段々深い地獄をご案内しよう。
【こちらは現世】
ここは新玉津島神社。北村季吟ゆかりの神社なのだが、このコースを定例でやっていたとき、「北村季吟というのは名前はご存知かもしれませんが」と言っても、誰も知らなかった。知っていたのは最初の1年間でたった1人だけ。季吟さんがちょっと気の毒になりました。
流石にこの人の弟子は誰もが知っていましたけど。
ふふふ、「弟子」って、誰でしょう?
●地獄八景観光ガイド
【第2景は黒縄地獄】
ここは盗みを働いた者が行く。
「墨縄」という大工さんの道具があるが、この地獄の名はそこから来ている。
まず鬼たちが墨縄を使って死者の身体に線を引いていく。何本も何本も引いていくのである。これが「切り取り線」になるのだな。
線を引き終わると、今度はノコギリが出てきて、引かれた線に沿ってギーコ、ギーコと、死者の体を切っていく。麻酔も何もないので、痛いですよ〜。
細かくバラバラにされて撒き散らかされてしまうのであるが、等活地獄と同じく、涼風が吹いてくると散らばった肉片が一箇所に集まり元通りの死者に戻る。そして再び線を引かれる。
何度も何度も切られては元に戻り、切られては元に戻るというのを繰り返して、終ることがないのだ。
これだけではない。黒縄地獄にはもっと他の責め苦もある。
たとえば、山と山の間に鉄の綱が渡してあり、その綱の下では地獄の釜が口を開けて煮えたぎっている。死者はここを綱渡りで渡らされる。大抵の者は途中で落ちる。地獄の釜にドボンとはまってグツグツと煮られるわけである。
ほどよく煮えたところで鬼が救い上げ、放置しておくのだが、ここでまた涼風が吹くと……もう言わなくても分かりますね。
あるいは、真っ赤に焼けた鉄の網の中へ死者を落とす。熱さのあまりもがけばもがくほど綱は死者の身体に絡まり苦痛は倍化される。
行きたくありませんね。
この下のさらに深いところにはまた別の地獄があります。その話はまた来週。
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