京都の料理職人達 vol.4
【日本料理 山玄茶】 増田伸彦氏
機が熟す日を待つ間、 学びとった料理の真髄
勉強は苦手だった。だが、一国一城の主になりたいという野心があった。「手っ取り早く夢を叶えるには、料理人になればいいと思ったんです」と[山玄茶]の主人・増田伸彦氏は笑う。が、料理界に入って24年もの間、人の下で働いたというから、増田少年の計算はいささか甘かったかもしれない。自称、のんびり屋。しかし、エピソードを聞くにつけ、増田氏は機が熟す日が必ず訪れるのを知っていた、と思えて仕方がない。
高校卒業後、修行先に選んだ店では、掃除の仕方からカウンターの磨き方まで仕込まれた。それまで「のんびりと人生を過ごしていた」増田少年の体重は半年で87kgから63kgに激減した。それでも「苦労したことはない」と述懐するあたりに、料理に携わることに喜びを感じていたことがうかがえる。
同期が辞めていく中、4年間下積み生活を続け、後に[招福楼]に入って腕を磨いた。その期間、実に20年。「本当は10年で辞めるつもりでしたが、そうなってしまいました(笑)」。副料理長を任されたことは理由の一つだが、何より先代の中村秀太良氏との出会いが大きかった。
「多くのことを学ばせていただきました。店に残ったのは、中村さんに教えを仰ぎたかったからなんです」。茶花やしつらえにしても、来店するお客それぞれで選ぶものが異なっ てくる。中村氏に教わったのは、お客をもてなす「心」だった。「料理は10年やれば誰でもできる。でも、料理人にとって美味しい料理を作る以上に大切なのは、お客様への気遣いだと思うのです」。[招福楼]で過ごした後半10年は、料理人として深みを増したかけがえのない時間だった。
その後独立し、店を構えたのは地元の滋賀県水口。京都・祇園に店を出したいという思いはあったが、「コンセプトが決まっていなかったので、京都への出店は時期尚早だと思ったんです」。いずれは祇園へ、という夢を温めて約6年。常客だった祇園[さ々木]の移転に伴い、2007年2月、その場所に店を構えることになった。この頃すでに増田氏は「京都では[招福楼]で学んできた料理を出そう」と腹をくくっていた。すべてのタイミングがピタリ、と重なると、現実は追い風を受けて加速度的に進んでいく。これこそが「機が熟す」ということなのだろう。
「今はお客様に精一杯尽くしたい」と増田氏は言う。では、10年後はどうだろう?「地元で小さい居酒屋をやりたいですね。店名は[のみくい亭]で(笑)」。実に肩の力の抜けた、一国一城の主である。
高校卒業後、修行先に選んだ店では、掃除の仕方からカウンターの磨き方まで仕込まれた。それまで「のんびりと人生を過ごしていた」増田少年の体重は半年で87kgから63kgに激減した。それでも「苦労したことはない」と述懐するあたりに、料理に携わることに喜びを感じていたことがうかがえる。
「多くのことを学ばせていただきました。店に残ったのは、中村さんに教えを仰ぎたかったからなんです」。茶花やしつらえにしても、来店するお客それぞれで選ぶものが異なっ てくる。中村氏に教わったのは、お客をもてなす「心」だった。「料理は10年やれば誰でもできる。でも、料理人にとって美味しい料理を作る以上に大切なのは、お客様への気遣いだと思うのです」。[招福楼]で過ごした後半10年は、料理人として深みを増したかけがえのない時間だった。
その後独立し、店を構えたのは地元の滋賀県水口。京都・祇園に店を出したいという思いはあったが、「コンセプトが決まっていなかったので、京都への出店は時期尚早だと思ったんです」。いずれは祇園へ、という夢を温めて約6年。常客だった祇園[さ々木]の移転に伴い、2007年2月、その場所に店を構えることになった。この頃すでに増田氏は「京都では[招福楼]で学んできた料理を出そう」と腹をくくっていた。すべてのタイミングがピタリ、と重なると、現実は追い風を受けて加速度的に進んでいく。これこそが「機が熟す」ということなのだろう。
「今はお客様に精一杯尽くしたい」と増田氏は言う。では、10年後はどうだろう?「地元で小さい居酒屋をやりたいですね。店名は[のみくい亭]で(笑)」。実に肩の力の抜けた、一国一城の主である。
増田伸彦 氏 ますだのぶひこ
1957年、滋賀県生まれ。地元が川魚や山の幸などの食材の宝庫だったこと、そして母親が料理上手だったことに影響を受け、少年時代から料理を作るように。料理人になると、技を磨くと同時に茶道にも親しみ、お茶を通じてお客をもてなすということがどういうことなのかを知ったという。文化としての料理を熟知する料理人は「10年後は故郷の水口に店を出して、お酒を飲みながらお客と楽しみたい」と話す。
主の人柄がお客同士をつなぐ
もてなしと同じく素材を重視し、毎日自ら仕入れに出かけている。「買い物するのが楽しくて、ついたくさん買ってしまう」という茶目っ気は和やかなムードづくりに一役買うらしく、カウンター席に座った見知らぬお客同士が、会話に花を咲かせることもしばしば。温厚な性格だが、 店名には禅語で「初心忘れるべからず」の意味を持つ言葉を用い、充満する旨み 瑞々しい味わい、雅な香り
一皿の小宇宙 味と香りが綾を織る
日本料理 山玄茶(さんげんちゃ)
■京都市東山区祇園町北側347-96■075・533・0218
■12:00~14:30(L.O.13:30)
18:00~21:30(L.O.20:00)
■火曜・第2月曜休
http://www.kyoto-izusen.com/
2007年12月号掲載
※当時の記事の為金額等に変更のおそれがありますのでご確認下さい。
※当時の記事の為金額等に変更のおそれがありますのでご確認下さい。