京都の料理職人達 vol.10
【日本料理 とくを】 徳尾真次
伝統と奥深さを武器に
変化を求める時代に挑む
幼少の食体験は、概して人の道を決めることがある。アイデア溢れる料理をつくる母親に育てられた子どもは、想像力豊かな大人へと成長し、高級レストランなどで本物の味を知った子どもは、そこで培った確かな味覚を武器に、料理界へと足を踏み入れることもある。
そこで、[日本料理 とくを]の当主、徳尾真次氏の話である。「両親が共働きだったので、家族揃って食事をするのはたいてい外食。それがイヤでイヤで(笑)。たまに、ついていくこともありましたが、だいたい私1人家に残って、冷蔵庫にあるもので何か作っていましたね」。それがいつしか楽しみになり、中学時代はフランス料理人に憧れた。しかし、高校を卒業する頃には、日本料理を極めると心に決めていた。その理由を「フレンチと違って、毎日食べても飽きないから」とは、生まれも育ちも京都の人間らしい言葉だ。修行先も、丸鍋で有名な [たん熊北店] で10年、食通が集まる祇園の割烹で5年、と日本料理をみっちり学び、約2年前、同店を構えた。
自身の料理を一言で表現すると「シンプル・イズ・ベスト」。いわく「色々と手を加えると、せっかくのいい食材がもったいないと思うんです」。しかし、スッポンは食べやすいよう骨を抜き、ワケギは外皮を剥くなど、気付かない部分にはおおいに手間をかける。もちろん、食べ手はそれを知る必要はない。
「なんかおいしいもの食べたなぁ、といい気分になってもらえたらいいんです」と徳尾氏はいたって謙虚だ。常に「教わったことを忠実に守りたい」という思いがある。変わらなければ飽きられる現在において、この考えはいささか時代に逆行しているという感もあろう。が、「変わらぬものを求めている人がいる限り、奇抜な盛り付けなどで食べ手を惑わす必要はない」と肝に銘じ、時代に挑戦するように、伝統を踏襲した料理を繰り出していく。
京都ならではの食材・若狭ぐじを使った料理はその一つだ。唐揚げからお造り、焼き物、酒蒸しまで、と幅広く供する。このような店は、今や京都においても稀有な存在で、多くの客がぐじ目当てに訪れるという。特に東京からの常客が多いそうだが、それは、伝統的な京料理が味わえると認識されているからではあるまいか。 徳尾氏は言う。「店を大きくせず、目の届く範囲で続けていこうと思っています」。目指しているのは、身の丈に合った営み。見た目の派手さより奥の深さを重んじる、京都で生まれ育った料理人らしい発想ではないか。
そこで、[日本料理 とくを]の当主、徳尾真次氏の話である。「両親が共働きだったので、家族揃って食事をするのはたいてい外食。それがイヤでイヤで(笑)。たまに、ついていくこともありましたが、だいたい私1人家に残って、冷蔵庫にあるもので何か作っていましたね」。それがいつしか楽しみになり、中学時代はフランス料理人に憧れた。しかし、高校を卒業する頃には、日本料理を極めると心に決めていた。その理由を「フレンチと違って、毎日食べても飽きないから」とは、生まれも育ちも京都の人間らしい言葉だ。修行先も、丸鍋で有名な [たん熊北店] で10年、食通が集まる祇園の割烹で5年、と日本料理をみっちり学び、約2年前、同店を構えた。
「なんかおいしいもの食べたなぁ、といい気分になってもらえたらいいんです」と徳尾氏はいたって謙虚だ。常に「教わったことを忠実に守りたい」という思いがある。変わらなければ飽きられる現在において、この考えはいささか時代に逆行しているという感もあろう。が、「変わらぬものを求めている人がいる限り、奇抜な盛り付けなどで食べ手を惑わす必要はない」と肝に銘じ、時代に挑戦するように、伝統を踏襲した料理を繰り出していく。
京都ならではの食材・若狭ぐじを使った料理はその一つだ。唐揚げからお造り、焼き物、酒蒸しまで、と幅広く供する。このような店は、今や京都においても稀有な存在で、多くの客がぐじ目当てに訪れるという。特に東京からの常客が多いそうだが、それは、伝統的な京料理が味わえると認識されているからではあるまいか。 徳尾氏は言う。「店を大きくせず、目の届く範囲で続けていこうと思っています」。目指しているのは、身の丈に合った営み。見た目の派手さより奥の深さを重んじる、京都で生まれ育った料理人らしい発想ではないか。
徳尾真次氏 とくおしんじ
'72年、京都生まれ。[たん熊北店]と祇園の割烹で15年の修行を積み、昨年2月、満を持して下木屋町に店を構えた。品書きに値段を表記することは花街ではご法度とされているが、「安心して召し上がってほしい」と店先に値段を記した品書きを置く。20代の若いカップルも訪れ、日本料理ファンの裾野を広げることに貢献している。
若者から旦那衆まで 客を選ばない不変性
店が祇園ではなく下木屋町にあること、開店して約2年と浅いせいもあって、「顔ささんからええわ」と旦那衆も訪れる。が、「喜んでいいのか、どうなのか」と徳尾氏は困惑気味だ。
食材は京都ブランド
伝統の味を求める人のために
美味しい=美しさ
目福口福を運ぶ美味
日本料理 とくを
■京都市下京区木屋町通仏光寺上ル075・351・3906
11:30~13:00
17:00~21:00(いずれも入店)
日曜休(月曜が祝日の場合連休)
昼は要予約
2006年12月号掲載
※当時の記事の為金額等に変更がありますのでご確認下さい。
※当時の記事の為金額等に変更がありますのでご確認下さい。